17 上層階へ
十時十分になって、ようやくブラントたちが来た。
「よかった。置いてかれたと思った」
「申し訳ございません。自分のせいで遅れてしまいました」母親を背負っている長身の警官が謝るので「気にしないでください。奥様、大丈夫ですか?」クラリー夫人が声を掛けると「はい」と、か細い声で答える。
「では、女性と子供たちは二列に並んで、男性は均等に囲んでください。君は中に入って」母親を背負っている警官を列に入れ「すみません! 彼の荷物を一つ、持ってもらえませんか?」
列に向かって声を掛けると「私が持ちます!」十六・七歳くらいの女性が手を上げるので「ありがとう」荷物を渡すと「お手数をお掛けして申し訳ありません」母親を背負った警官が頭を下げる。
「いいんですよ。仲間じゃないですか」荷物を持つと元の場所へ戻る。
「ブラントは一番後ろに付いてくれ」
「わかった」手を上げて列の後ろに走っていくと「では出発します!」先頭に立って歩きだす。
少しすると、アパートの住人たちが、振り返って今まで住んでいたボロアパートを名残惜しそうに見はじめるので、ロイは急ぎたい衝動を抑え、彼らが歩きだすまで待つことにした。
十時二十五分。
予定より二十五分遅れて出発すると「遅れた時間を取り戻します! 少しきついと思いますが、頑張ってください!」
十時五十分。
クレスの家に着いた。
「遅くなった。準備できてるか?」
ロイが家の中に向かって声を掛けると、クレスたちが荷物を背負って出てきた。
ケガをしているダイヤースはマーティが抱え、出発する。
午前十一時半。
境界線の公園まで上がってきた。
「ここまで来たら追いつけないだろう」ロイが腕時計を見ると「そうだな」マーティが公園から階下層を見下ろす。
「そういえば、市場であった予言者のお婆さんは、うまく移動できたかな?」
『お婆ちゃん、旅支度をしてたし、私のお迎えが来たら出発するって言ってたらから、大丈夫だよ』
「シュール、大丈夫か?」
『ちょっと大丈夫じゃない』
「昨日、思いっきり暴れたから、疲れが取れてないんだよ」
『……そうかもしれない』
「そうだ。疲れてるところを悪いけど、今の内にペンダントヘッドの大きさになってくれないか? ゲートに入るときに引っ掛かって、没収されてしまうかもしれないから」
『……わかった』
カバーを取って柄の部分を持つと少しして剣が光りだし、徐々に小さくなっていくとペンダントヘッドの大きさになった。
『これでいい?』
「ああ。窮屈だろうけど、艦に戻るまで我慢な」
『……わかった。我慢する』
「艦に戻ったら声を掛けるから、それまで寝てていいよ」
『……うん』と返事をして静かになった。
バッグからチェーンを出すと剣の柄の部分に通し、首から下げて革製のカバーをバックにしまうと「さあ、行くぞ」再び上層階を目指して歩きだす。
休憩を取りながら歩くこと約二時間、ようやく上層階へ辿りついた。
みんな、初めて見る機械都市に驚いている。
「上はこんなふうになってるのか」列の中から呟く声が聞こえてきた。
「ここまで来たらあと少しだ。スペースエアポートまで頑張ろう」
メインストリートを進んでいくと、行き交う人達は異様な団体を奇妙な目で見ていく。




