16-3 新しいクルー
彼らを見送るとロイは借りている部屋に戻り、タブレットに入っているチャットアプリの電話機能で、スペースエアポートの通信局へ電話をかけた。
“はい、こちら中央スペースエアポート通信局です”
「百二十五番ゲート内のレジーナ・マリス号に繋いでください」
“かしこまりました。少々お待ちください”少し待たされると “お待たせ致しました。これからお繋ぎいたします。どうぞ”
“レジーナ・マリス号です”
「エルか? 僕だ」
“ロイ! どこにいるんだよ! 今まで何してたんだよ!”
「いや、ちょっとアクシデントがあってさ」
“アクシデントって何?”
「帰ったらちゃんと説明するから、今は先に話を聞いてくれないか?」
“何言ってんだよ! どれだけ心配したかわかってんの?”
「頼むから、時間がないんだ!」
“……わかった。なに?”
「これからデータを送るから、リストに載ってる分の乗務員用パスとIDを大至急申請してほしいんだ」
保存データを送信すると “ちょっと待ってよ。一体、何人いるの?”
「五十二人」
“エエッ! そんなにいるの? 今日の午後出発だってわかってるよね?”
「わかってるよ。だから、何とか間に合わせてくれ」
“そんなこと言われても無理だよ”
「無理を承知で言ってるんだ。頼む!」
“そんなこと言われても、無理なものは無理だよ”
「ここで僕たちが見放したら、彼らは路頭に迷ってしまうんだ」
“路頭に迷う? 一体、どんな人達を乗せようとしてるの?”
「詳しくはあとで話す。とにかく、見捨てていけない人達なんだ!」
“……しょうがないなあ。何とか頑張ってみるよ”
「頼む!」
“何時くらいに戻ってこれる?”
「午後一時半過ぎくらいにはゲート前に着く予定だ」
“そう。パスができるの、きっと出発時間ギリギリくらいだと思うから、すぐ乗艦できるようにしといてよ”
「わかった。ゲートに着いたら連絡するよ」
電話を切ると「どうだった?」あとから入って来たマーティが聞いてくる。
「予想どおり怒られたよ」
「しかたない。丸二日、連絡しなかったんだから」
午前十時十五分前。
アパート前に住人八家族、四人の警官とその家族が荷物を持って集まっていた。
「遅いな、ブラントたち」
マーティはクレスとローマンを連れて、出発の準備をしにクレスの家に先に向かっていた。
ロベージとヘンリーは、ロイたちの案内役として残っている。
十時十分前。
ブラントたちはまだ来ない。
十時になった。
「あと五分だけ待ってもらえませんか?」集まっている人達に声を掛けると「もちろんですよ。一緒に行くと約束したんですからね」クラリー夫人の言葉にみんな頷くので「ありがとうございます」頭を下げる。




