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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第三章 アグリモニー星
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16-1 新しいクルー


 しばらくの間、沈黙があった後「みなさん」ロイが改めて声を掛ける。「この星から出ませんか?」

「エッ?」ルーサンが顔をあげる。


「みんなで、この星から出ませんか?」


 集まっている住人たちは話の趣旨(しゅし)が理解できず、キョトンとした顔を向ける。


「どうですか? あの子たちやみなさん。僕たちが連れてきた少年たちも一緒です。出ようという気持ちがありますか?」


 住人たちはお互いを見合うと「あります。ここにいたら、いつまで経っても先が見えない」ルーサンが口を開くと「僕たちも行きます。ここにいては、生まれてくる子供にまともな教育を受けさせてやれません」


「私たちも行きます」夫が事故で片腕をなくし、就職できないという中年夫婦の夫人が続く。


「では、出発する準備を始めてください」


「あの、どうやってこの星から出るんですか? 私たちはIDカードやパスポートを作るお金なんてありませんよ」身重(みおも)の夫人が不安げな顔をするので「僕たちの艦で出るんです。IDカードやパスのことは心配しないでください。こちらで用意します」


「あなたたちの艦ですか?」不思議そうな顔をするクラリー夫人に「僕たちはある目的のために旅をしてるんですが、途中で環境のいい星があったら、そこへ移住すればいい」


「ロイ、いいのか?」マーティが耳打ちしてくるので「シュールを助けてくれた予言者のお婆さんの話を思い出したんだ。『早くここから立ち去れ。みんなでな』きっとこの事を言ったんだと思う」


「なるほど」


「艦は大型艦ですし、設備も整ってます。仲間もきっと歓迎してくれ……まずい! エルに連絡してない!」


「今日は何日ですか?」マーティが慌てて夫人に聞くと「二十六日ですけど」

「やばいぞ。今日出発だ」

「何時出港だった?」

「確か……午後三時半くらいだ」


「急いでパスの手配をしないと間に合わない。エルに頼むしかないが……全然連絡してないからな……」彼の怒った顔が目に浮かぶ。


「どうされたんですか?」慌てる二人を見て夫人が心配そうに聞いてくる。

「実は、市内見物をすると言って出たっきり、一度も連絡を入れてないものですから」


「そうだったんですか。でも、連絡する(ひま)がなかったでしょう? 大変なことが起きたんですからね。訳を話せば許してくれますよ」


「そうだといいんですが……とにかく今日出発するので、急いで荷物をまとめて、午前九時半にはここを出られるようにしておいてください」


 アパートの住人がそれぞれの部屋へ戻るために玄関へ行くと、ドアの外に、河に飛び込んだ夫婦がずぶ()れの状態で立っていた。


「無事だったの!」クラリー夫人が()け寄って二人の手を取ると「子供たちを……殺してしまいました……」と言って泣きだす。


「大丈夫。子供たちは無事よ」

「……本当ですか?」耳を疑い、聞き返す。


「彼らが助けてくれたのよ」後ろから来るロイたちを見ると「生きてたんですか!」二人が()け寄る。


「あなたたちは、ベンチに座ってた……」

「なんてことするんですか!」

「ロイ」マーティが止める。


「子供たちの恐怖を考えてください!」

「すみません、すみません」二人して頭を下げる。


「とにかく、部屋へ戻ってシャワーを浴びたら、子供たちに謝って、二度とこんな事しないと約束してください!」


「……はい!」


「今日の午前九時半にはここを出ますから、急いで荷造りしてください」

「荷造り?」


「私たちはロイさんたちの艦に乗せてもらって、この星から出るんですよ。もちろん、あなたたちも一緒に行くでしょう?」


「この星から出る?」


「ええ。さあ、風邪を引かないうちに部屋へ戻って、準備してください」

「はい!」返事をすると、他の住人たちと一緒に外階段を上がっていく。


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