14-2 もう一つやり返す
ビルドとカードーンは、警官に呼ばれて陸に上がったところで逮捕されそうになったので、逮捕状を持っているのかと大騒ぎしていたが、ロイたちを見ると顔色を変えた。
「やあ、また会ったな」
「知らねえな。人違いじゃねえか?」ビルドが惚けた顔をする。
「僕たちの顔を覚えてないのか? でも、これは覚えてるだろう?」剣の柄の部分のカバーを取ると「アーッ! その剣!」二人が取ろうと手を出してくるので、ロイが一発ずつぶっ飛ばすと『私もぶっ飛ばす!』シュールの大声が聞こえる。
「何すんだこの野郎!」ビルドが頬を押さえて怒鳴るので「撫でてやったんだよ」握り拳を見せると「俺も撫でてやる」間髪入れずにマーティが一発ずつ殴るので『ずるい! 私もやる!』
「何やってるんですか刑事さん! こいつらを止めてください!」カードーンが動かないブラントに訴える。
突然の出来事だったので、驚きのあまり茫然としていた彼は、これから腫れ上がるだろう二人の顔を見ると「どうした?」とシラを切る。
「どうしたじゃないでしょう? いきなり殴られたのを見ましたよね? 何もしてない俺たちを殴ったんですよ。逮捕してください!」
「お前らは後ろから殴ったんだろう?」
「なんてことを言うんですか。そんな卑怯なことしませんよ」心外だ、という顔をするカードーン。
「彼らを殴って、金品を盗んだんだろう?」
「そんな事してませんよ。第一、俺たちがやったという証拠があるんですか?」
「さっき、剣を見て取ろうとしたじゃないか」
「あの剣は俺たちのものなんですよ」ビルドが口を挟んでくる。「運悪く河へ落してしまって、今まで探してたんですよ。その剣を我がもの顔で身に着けてる奴のほうが盗人です!」ロイを指さすので「言うにことかいて何を言い出すんだ?」再び怒りが沸いてくる。
「刑事さん、早くそいつらを捕まえてください。そして、俺たちの剣を取り戻してください!」
「呆れたコソ泥だな」思わぬ反撃を食らってさらに腹が立つマーティ。「その言葉、ソックリそっちに返してやる! お前たちのものだという証拠があるのか!」言い返すと「それは……」言葉に詰まるので「こんなところで詰まるのか?」もう一発殴ろうと握り拳を作る。
「お前らのものだと言うならやるよ」ロイがベルトを外して剣を差しだすので「ほら、自供した。俺たちに剣を返すじゃないか」
ブラントが、どういうつもりだ? という顔でロイを見ると「見てな」ニッと笑う。
ビルドが剣を受け取ると「刑事さん、早くこいつらを捕まえてください!」カードーンがロイを指さすので「まあちょっと待て。実はその剣を探す依頼も受けててな。見付かったのはいいが、ちゃんと見せてもらってないんだ。カバーを取って見せてくれないか? 話では、素晴らしい細工が施してあるそうじゃないか」
「いいですよ。この剣の素晴らしさを見てください。盗みたくなるのがわかりますから」
「動機はそれか」まあ、そんなところだろうと頷くロイ。
『あんたらに褒められたって、ちっとも嬉しくないわ!』凄みのある声を出すシュール。
ビルドが剣のカバーを外すのを見て、ロイがブラントに「これから面白い光景が見られるよ」と耳打ちする。
「ほら、刑事さん、見てください」
バリバリバリッ!
「ウワッ!」感電して剣を放り投げると、カシャーン! と音を立てて地面に落ちる。
「おい。大事な剣なんだぞ。乱暴に扱うなよ」
「ビルド、大丈夫か?」カードーンが剣を拾うと、バリバリバリバリッ!「ヒャー!」また剣を放り投げる。
二人は剣を拾うのをやめ、後ろを向いてボソボソ話すと「何だって! それじゃ運べないじゃないか!」ビルドがカードーンを叱る。
「お前ら、何をコソコソ話してるんだ?」ブラントが声を掛けると「こいつが剣用の包みをどこかに置き忘れてきてしまったものですから、怒ってたんですよ」
「その剣に専用の包みなんかないよ。お前らが置き忘れたのは、盗難防止対策用の耐電シートだろう?」ロイが種明かしすると、二人の顔色が変わる。
「なるほど。耐電シートを使って盗難防止装置からの感電を食い止め、盗みを働いてたのか」
「ヤダなあ刑事さん。そんなのアイツらの勝手な思い込みでしょう?」相変わらず交わしてくるビルド。




