14-1 もう一つやり返す
店から出ると、ロベージたちが呼びにいったブラントが、数名の警察官と一緒に到着していた。
「グッドタイミング。アイツらが殺しの犯人だよ」路上で伸びている三人を指すと「一体、何があったんだ?」不思議そうに聞き返すので「チャンバラごっこ、かな?」
「何だって? あれほど犯人を見付けたら、何もしないで連絡しろと言ったじゃないか!」
「だから、知らせに行ったじゃないか」
「……もういい! 教えた俺がバカだった!」後悔するが思考を切り替え「ケガ人は出なかっただろうな?」睨むので「もちろん。アイツら以外は」
「そうか」一応安心するが、オープンテラスができそうな壊れた店を見て「チャンバラごっこで、あんなに大きな穴があくか?」頭を悩ますと、マーティが「店のマスターには修理費を渡してある。心配するな」フォローしたつもりだが「やっぱり仕返ししたんじゃないか!」目を釣りあげて怒鳴る。
「しまった!」
「でも、悪い奴らへいい見せしめになるじゃないか」ロイがフォローすると「関係ない人を巻きこんで、何が見せしめだ!」顔を真っ赤にして怒る彼をまあまあと宥めながら「僕たちは剣を取り戻せたし、ブラントは犯人を逮捕できた。終わり良ければすべて良しにしよう」
「そういえば、見付かったのか? 例の剣」
「ああ、運がよかったよ」定位置に戻った剣を見せる。
「しかしなあ」壊れた店を見て肩を落とすので「心配するな。もう一つ手柄を立てさせてやる」と言うマーティに「どういう意味だ?」聞き返すので「最初に俺たちから盗んだ奴らを捕まえるんだ。アイツらのことだ、まだ河をさらってるだろう」
「ここはほかの警官に任せて、一緒に来いよ」
「ちょっと待っててくれ。あとの指示を出してくる」
道の真ん中で伸びている三人の対応をしている警官のところへ行き、指示をして戻ってくると、ロイたちと一緒に河へ向かった。
ブラントは途中、警察署へ連絡して数名の応援を手配し、河に到着したころには、空が夕焼けで赤く染まっていた。
河面を見ると、例の二人が諦めずに剣を探している。
「バカとしか言いようがないな。ある程度探して、見付からなければ拾われた可能性があると、どうして気付かないんだ?」呆れるロイ。
「油断してたとはいえ、あんなのにしてやられたなんて、恥もいいところだ」額に青筋を立てるマーティ。
怒りが込み上げてくる二人の後頭部には、まだ大きなタンコブができている。
「最初に盗んだのはアイツらなのか?」
「そうだ。俺たちの後頭部を思いっきり殴りやがった」
「そうか。ビルドとカードーンだったのか」
「知ってるのか!」二人が詰め寄ると「この辺では、姑息なコソ泥として有名だよ」かわいそうになあ、という哀れみの目をすると「カードーンはそうでもないが、ビルドがけっこう頭の切れる奴で、電気技術の資格を持ってるから手先が器用なんだ」
「電気技術か。なるほど。耐電シートくらい簡単に手に入れられるな」マーティを見ると「一般的な防犯装置は、相手を感電させるものが多い。それに対応するため、用意してたというところだろう」
「それに、アイツらは旅行者しか狙わないんだ。滞在期間が決まってるうえに、不慣れなよその星だ。被害届を出す人が少ないんだ。出したとしても、見付かったときは遥か遠くに行ってしまってる。余程のことでもないかぎり戻ってくる人はいないから、ある程度期間が過ぎると、警察も捜査を打ち切ってしまうんだ」
「よくわかった」腸が煮えたぎってくるロイ。
「怒りの火に油を注いだだけだな」同様のマーティ。
「それにしても、なんで河をさらってるんだ?」喚いている二人を見るブラント。
「僕から盗んだこの剣をある少年に盗られて、取り返そうと銃で撃ったとき、河に落としてしまったんだ。とっくに拾われたとも知らないで、ああやって探してるんだよ」
ブラントは険しい顔付きになり「撃たれた少年はどうなったんだ?」と聞くので「何とか一命は取り留めたよ。その少年と面合わせしたらハッキリするだろう。殺人未遂だ」
「そうなればアイツらをブタ箱に入れられる。よし、取り押さえろ!」




