13-2 やられたからやり返す
「そっちこそ、これで終わりだと思うなよ」ビールを飲みほすロイが剣のカバーを取ると「その剣は!」男たちの顔色が変わる。
「見覚えがあるだろう? 昨日、お前らが殺した男から奪いとり、市場で売った僕の剣だ」
「マ、マズいぜ兄貴」青白肌男がリーダー格に縋ると「何言ってんだ。アイツから剣を奪えば、また金が手に入るじゃないか」
『ふざけるな! 私は売りものじゃない!』
「おいおい、そんなこと言うからさらに怒ったぞ」
「怒った? 剣を人扱いして、お前、頭がおかしいんじゃないか?」リーダー格は持っていた椅子の脚を放り投げ、上着の内ポケットから銃を取りだして銃口をロイに向ける。
「形勢逆転だ。袋とその剣をこっちに寄越しな」
「やめとけ」動じないマーティ。
「兄ちゃん、この状況がわからねえのか? 死にたくなれば言うとおりにしろ!」バーンと一発、天井に向けて撃つので「……わかった」袋の口を結ぶと「素直に言うこと聞けばいいんだよ」口元に笑みを浮かべるが「ほら」マーティが袋を投げると同時にリーダー格の銃めがけて、カウンターに置いてあるガラスの灰皿を投げる。
ゴツッ!「イテーッ!」ゴトッと音を立てて銃と袋が床に落ちる。
「この野郎!」五分刈りが落ちた銃と袋を拾おうとするので、マーティがさらに灰皿を投げて動きを止めると、ロイが剣を抜く。
「シュール、気が済むまで仕返ししていいぞ」
『ハーイ、思う存分、仕返ししまーす!』
「覚悟しろ!」
「何が覚悟しろだ! なめんな!」リーダー格が五分刈りの銃を取ると銃口を向け「剣が銃に勝てるわけねえだろう」引きつりながらもニヤッと笑うので「本当にそう思うか?」ロイが剣先を向ける。
「な、なんだよあの剣。光りだしたぞ」五分刈りと青白肌が怯えだすので「まやかしだ。騙されるな!」リーダー格が怒鳴ると剣の周りにプラズマが走りだす。
「兄貴、あれでもまやかしですか?」青白肌がリーダー格の後ろに隠れると「幻覚だ。あんなこと、現実にあり得ないだろう」声が震えだしている。
「幻覚か試してみるか? シュール、少し遊んでやれ」ロイがゴーサインを出すと『了解!』プラズマがリーダー格の銃へ飛んでいき、バリバリバリッ!「ウワッ!」ガシャーン、転がった銃から煙がでる。
「兄貴! 本物ですよ! 逃げましょう!」五分刈りが悲鳴を上げると「バカ言うんじゃねえ! あの剣を手に入れれば、俺たち無敵じゃねえか!」今度はナイフを出すが、それにもプラズマが飛んでいく。
バリバリバリッ! パキーン!
「ギャア!」ナイフの刃が粉々になり、リーダー格の上着の袖も焦げる。
「次は何が出るんだ?」ロイがプラズマをまとっている剣先を向けると「兄貴! 逃げましょう!」五分刈りと青白肌が後ずさりしはじめるので「まだ終わってないぞ!」剣先を天井に向けると、逃げようとする二人の頭上の蛍光灯にプラズマが当たり、割れた破片が降ってくる。
「ウワア!」青白肌は怯んでその場にしゃがみ込むが、五分刈りは「畜生!」やけくそになって飛び掛かってくる。
「いい度胸だ」ロイが剣先を向けると立ち止まり、膨らむプラズマを見て飛び出したことを後悔したのか、後ずさりを始める。
「どうした? 掛かってくるんじゃないのか?」
「兄貴、相手が悪いですよ」五分刈りが涙目で訴えると「その剣は何なんだよ。まるで生きてるみてえじゃねえか」震える声をおさえて虚勢を張るリーダー格。
「そんなこと言うと、また怒るぞ」
バリバリッとプラズマが走る。
「なんて言ってるか教えてやろうか。金欲しさに人を殺して奪った挙句、売り飛ばした。その酬いを受けろ」
「冗談じゃねえ! そんな事でいちいち酬いなんて受けられるか! ここじゃ強い者が生き残るんだ!」
「腐った根性に治療法はない。シュール、遊びは終わりだ」
『とどめ、行きます!』ブワッとプラズマが大きくなると、三人めがけて飛んでいく。
バリバリバリッ! ガッシャーン!
三人は店の大きな窓ガラスを突き破り、外へ飛んでいった。
『仕返し終了!』スッキリしたシュール。
「さて、一つは片付いたな」剣をしまうロイ。
「次は、俺たちの頭を殴ったアイツらだ」マーティが床に落ちた布袋を拾うと埃をはらい、ロイに返す。




