13-1 やられたからやり返す
市場から出て警察署に向かっていると、突然シュールが『アイツらだ!』大声を出し『今、左の道へ曲がった三人組、私を売った奴らだよ!』
「なんだって!」走って角を曲がると、えらくご機嫌な三人組が、道の真ん中をノロノロと歩いていた。
「シュール、本当にアイツらなのか?」ロイが確認すると『そうだよ。アイツら、私を河底から引き上げてくれたおじさんを殺したんだよ』
「知ってるよ。今、警察が捜してる」
三人の男たちは、ブラントから聞いた犯人の人数と特徴に酷似している。
【二、三十代の男が三人、周りを気にしながら走り去っていったそうです。一人はガッチリした体格で、もう一人は痩せ型でヒョロリとしていて、もう一人はスキンヘッドのようだったそうです】
「ロベージ、警察署へ行ってブラントを連れてこい」マーティが声を掛けると、ヘンリーと一緒に走っていく。
三人の男たちの様子を見ていると近くのカフェバーに入っていくので、ロイたちはクレスとローマンを少し離れたところで待たせ、間をおいて店に入った。
男たちはカウンターの真ん中に並んで座り、極上のウイスキーを昼間から頼んでいる。
ロイたちは入り口近くのカウンターに座り、グラスビールを頼んだ。
カウンター内にいるマスターが「今日はえらく羽振りがいいじゃないか。いい事があったのか?」真ん中に座っている、リーダー格の強面男に話し掛けると「上物が手に入ってさ。いい金になったんだよ」ニヤッと笑う。
『上物だ? 物扱いするんじゃない!』怒りのスイッチが入るシュール。
「傍から見れば物だろう」
「マーティ、聞こえるぞ」
『ロイ、マーティ。アイツらをぶちのめしてよ!』
「言われなくとも、そうするつもりだ」
「他に客がいるから、あまり迷惑にならない程度にしよう」
ご機嫌な三人組は、カウンターの端にいるロイたちに気付いて声を掛けてきた。
「よお、兄ちゃんたち。そんなにシケた顔してどうしたんだ? 彼女にでもフラれたか?」リーダー格の隣にいる五分刈り男がからかうので、残りの二人が大笑いする。
「そういう訳じゃないけど、腹の立つことがあってね」
「ホウ、何があったんだい?」リーダー格が興味のある顔をするので「僕の大事な剣が一昨日盗まれたので、あちこち探し回って、さっき、この先の市場で見付けて買い戻したんだ」
「それは災難だったねえ」三人組のもう一人、病的な青白い顔のヒョロッとした男が「でも、見付かったんならラッキーだぜ。普通は出てこないからねえ」と早くも酔いはじめていて「ここら辺は物騒だから、気を付けないといけないよお」とロレツが微妙に回らない。
「で、盗んだ奴は見付かったのか?」リーダー格がニヤニヤ笑うので「さっき偶然見付けてね。そうしたら、彼女が仕返ししたいと言うんだ」カバーが掛かった剣を持ち上げて見せると「その剣が彼女?」五分刈りが目を丸くする。
「こりゃあ驚いた!」大袈裟に驚くリーダー格。
「大切な彼女を盗られちゃ、怒るよなあ」同情したフリをする青白肌。
『ぶっ飛ばす!』シュールの怒りが頂点に達した。
すると、マーティがロイに例の布袋を出せと合図するので、バッグから出して渡すと中からブローチの箱を取りだし「店の修理費だ。これだけあれば足りるだろう」マスターに渡すと「何を始めるんで?」
「ケガしたくなければ店から出ろ」と言うと、引きつった顔をしてそそくさとカウンターから出ていく。
「そっちの兄ちゃん。いい物持ってるじゃねえか。俺たちにも分けてくれよ」リーダー格が目ざとく見付けるので「それだけ羽振りがいいのに、まだ欲しいのか?」
「金は消耗品だ。いくらあっても足りねえよ」
「それもそうだな。いいだろう。分けてやる」ブローチが入った箱を取りだすので『マーティ! 本当にあげるの?』驚くシュールに「いいから見てな」声を掛けるロイ。
「優しいねえ。俺たち今日はついてるな」リーダー格が仲間二人を見ると「まったくだ。友達になりてえよ」五分刈りが大きく頷き「世の中捨てたものじゃないな」青白肌男がニヤニヤ笑う。
五分刈りが箱を取りにきたので腕を掴んで後ろへ投げ飛ばすと、テーブルに背中をぶつけ、うめき声を上げてうずくまる。
「てめえ! 何すんだ!」リーダー格が殴りかかってくるのを交わし、後ろから蹴り飛ばすと、残っている青白肌男の胸ぐらを掴み、一発殴って投げ飛ばすので、店にいた数名の客が外へ走りだしていく。
「おめえら、こんな事してタダで済むと思うなよ! 俺たちはこの辺じゃ顔の知れた大物なんだぞ! 覚悟しろ!」リーダー格が顔を真っ赤にして立ち上がると、壊れた椅子の脚を持ってマーティのほうを向く。




