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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第一章 旅の始まり
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4 金青(こんじょう) の剣

 

「さて、ロイ様にお渡ししないといけないものができましたよ」


 お師匠様は立ち上がると部屋の右側にある小部屋の前へいき、ドアに(きざ)まれている幾何学模様(きかがくもよう)の中央に手をおくと呪文らしき言葉を(とな)え、少しすると、ドアノブと反対側の右側の位置に別のノブが出てきた。


 ドアを開けるとその部屋は(せま)く、中央に一本の剣が立て掛けてあり、お師匠様はその剣を持ってくるとテーブルに置く。


 (あか)りに照らされたその剣は、見事な彫刻が(ほどこ)された青い(さや)(おさ)まっている。


「まあまあ、ロイ様の髪の色によく似ていますね」

「これはすごい。これほどの剣は今まで見たことがありません。きっと由緒ある品なのでしょうね」


「この剣は、あの方からお預かりしたものなんですよ」

「預かった?」

「あの方のところから戻るとき、こうおっしゃられたんですよ」



『再び我の元へ来ることになろう。その時は、この剣を持参するがよい』



「ということは、また何かが起こると、その人は予言したんですか?」

「そうなんですよ」


「どんな事が起こるかまでは、教えてもらえなかったんですか?」

「未来は随時(ずいじ)、変化しますからね」


「具体的にはわからない、ということですか?」

「そうですね」


「とにかく、その人に会ってきます。入り口となる影の森はどこにあるんですか?」

「わかりません」


「エッ、わからない? どうしてですか? 影の森に行かれたんですよね?」


「もちろん参りましたよ。ですが、先ほども申し上げたとおり、その存在を明るみ出してはいけない方なのですよ。なので、場所の記憶を消されてしまったんですよ」


「いや、理由はわかりますけど、なにも記憶を消すことはないじゃないですか。それでは、来いと言っておきながら場所を教えないのと同じですよ」


「入り口まで行く道は一つではないんですよ」

「……どういう意味ですか?」


「私たちが辿(たど)った道ではない他の道から行くことになる、ということですよ」

「どういうことですか? お師匠様たちは、口伝に書かれてあるとおりに行かれたんですよね?」


(いず)れわかるときが来るでしょう。さて、これから私の予言をお話ししましょうね」

「お師匠様」


「ロイ様にはロイ様の行き方があると申しているのですよ」

「僕の行き方ですか?」


「そうですよ。では、予言をお話しするので、よく聞いてくださいね」


「あ、ちょっと待ってください」上着の内ポケットから携帯を取りだし、録音ボタンを押すと「お願いします」


「まず、出発は明日の夕方。(ふね)は最新鋭の大型戦闘艦。完成したばかりのものがドッグにありますよ。今回は長旅となるので準備なさい」


「どのくらいの期間になるでしょうか」

「さあ、それはお答えできませんね。予言者といえど、死後のことはわかりませんからね」


「死後って、どういう意味ですか?」

「ロイ様とお会いできるのが、今日が最後かもしれない、ということですよ」


「ちょっと待ってください。いきなりそんなこと言わないでください」

「私の命は持ってあと四・五年でしょう。それ以上の旅だとしかわからないのですよ」


「そんな……」

「こればかりは運命ですからね。仕方ありませんよ」


 言葉をなくすロイに「そんな顔をなさってはいけませんよ。これから大事な旅が始まるのですからね」


「大事、ですか?」


「そうですよ。ロイ様はこの旅でいろんな事をご経験されるでしょうね。そして、人生を大きく変える人物とお会いするでしょうね」


「僕の人生を変える人物ですか?」


「さあ、私の予言はここまでですよ。お戻りになって出発の準備をなさい。対策本部ではすでに取り掛かっているでしょう」テーブルに置いてある剣を差しだすので「お師匠様、まだお聞きしたいことがあるんですが」


「早くお戻りなさいね」言葉を(さえぎ)り、さらに剣を差し出すので「……わかりました」聞くのを(あきら)めて剣を受け取る。


「その剣は肌身離さず、いつも身に着けておいてくださいね」

「でも、大事な剣ですから、どこかに保管しておいたほうがいいのではないですか?」


「その剣は意思を持ってるんですよ。そして、持ち主を選ぶんですよ」

「この剣が意思を持ってる? どういう意味ですか?」


「持ち主と認めた人にしか、持つことができないんですよ」

「はあ。では、僕は持ち主と認められた、ということですか?」

「そうですよ」満足そうに笑う。


「よくわからないなあ」困惑するロイに「この剣は、不思議な力で持つ者を守るんですよ。ですから、肌身離さずと申し上げたんですよ」


「不思議な力ですか」

「さあ、玄関までお送りしますよ」



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