12 耐電シート
店から出ると警察署へ向かった。
ブラントに剣が見付かったと報告するためである。
そして、カバーを着けた剣は定位置に戻った。
「そういえばシュール。どうして強盗に遭ったとき、得意のプラズマを食らわせなかったんだ?」疑問に思っていることを聞くと『食らわせたよ。アイツらが剣を持ったとき。でも、効かなかったの』
「なんで?」
『私が聞きたい!』
「アイツら、頑丈なゴム手袋でもしてたのか?」
『ううん、素手だった』
「じゃあ、なんで効かなかったんだ? この星の住民は対電気人間なのか?」
「そんな人間は存在しない」呆れるマーティだが「それにしても不思議だな。シュールのことだ、手加減なしで思いっきりやったんだろう?」
『もちろん!』
「あと考えられるのは、プラズマを封じたかだな」
「封じた?」マーティを見ると「ダイヤースの話では、剣は布に包まれてた。その布は耐電シートの類だったんじゃないか?」
「なるほど。もしそうなら納得できるけど、そんな偶然あるか?」
「でなきゃ、無事でいられないだろう?」
「それはそうだけど」
『その耐電シートって、電気を通さないの?』
「作業中、電気を放電する機械なんかに掛けて、感電を防ぐものだ」
『ふうん。じゃあ、その耐電シートだったと思う。そのシートに包まれてたとき、どんなに頑張ってもプラズマが出なかったのに、私を持ち逃げした男の子が撃たれて河に落ちたとき、シートが取れて、そのあとはバリバリに出たから』
「河の中でプラズマを放電したのか!」
『放電したというか、出た』
「それで、大量の魚が感電して浮き上がったのか」なるほどと頷くロイ。
「とにかく、耐電シートの類だったわけか」納得するマーティ。
「じゃあ、河から引き上げてもらった後、次の強盗に持っていかれたときはどうしたんだ? プラズマを食らわせなかったのか?」
『それがね。引き上げてもらったとき、そのシートも一緒だったの。引き上げてくれたおじさんはそのシートも一緒に売ろうとしてたみたいで、きれいに洗って乾かした後、またそのシートで剣を包んじゃったの』
「不幸中の更なる不幸だな」
『他のもので包んでって大声で言ったんだけど、聞いてくれなかったの』
「まあ、そうだろうな。それで、どこでそのシートが取れたんだ?」
『さっきの予言者のお婆さんが買い取ってくれた後、シートを取って細長い袋に入れてくれたの』
「そう言えば、シュールの声が聞こえたと言ってたな。何か話しかけてきたか?」
『ううん、何も』
「ところで、俺たちの声が聞こえたのは、この市場に入ってからか?」マーティが気になっていることを聞くと『思った以上にでかい市場だなって、マーティの声が聞こえたのが最初』
「そうか。どうやら、声の聞こえる範囲があるらしいな」
「まあ、普通に話してても聞こえる範囲があるから」
「頭の中に聞こえてきても、それは同じということか」




