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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第三章 アグリモニー星
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10 ラディウス・ソリッシュ

 

 目的の店は通りの突き当りに近いところにあり、店の前に立つと『ロイ! マーティ!』シュールの声が聞こえるので、ローマンを降ろしたロイから白いテントの店の中に入る。


「どこだ?」店内を見回すと『正面のところ。剣の()が袋から少し出てるよ』と言われて正面奥に目を向けると、ハンガーにぶら下がっている細長い布袋から、剣の()の部分が少しだけ出ているのを見付けた。


 ロイは、袋の前で薄紫色の座布団に座っているグレーのコートを羽織った老婆に「後ろのハンガーに掛かってる袋の中の剣を見せてくれませんか?」と声を掛けるとゆっくり顔を上げ「あれが剣だと、どうしてわかるんだい?」と聞き返してきた。


 思わぬ展開に「それは……細長い袋に入ってるから……そうだろうと……」(我ながらトンチンカンなこと言ったな)ロイが困った顔をすると「ホホホッ、やっとお迎えが来たようだね」老婆は立ち上がり、袋を取って中から剣をだす。


「どうして迎えが来たとわかるんですか?」不審(ふしん)そうに聞くと「あんたたちの会話を聞いてたからだよ。ほれ、あんたのだろう?」差し出された剣を受け取ると『ローイー!』シュールが泣きだすので剣がキラキラと光りだす。


「ごめん、ごめん。怖い思いをさせて悪かった」

『置いてかれると思った!』

「そんな事しないよ」

「お嬢ちゃん、戻れてよかったね」


「ねえ兄ちゃん。なんで急に剣が光りだしたの? それに誰と話してんの? シュールって誰?」ロベージが不思議そうに聞いてくる。


 他の少年たちも、ロイが持つ光る剣を不思議そうに見ている。


「坊やたち。ババがおいしいお茶を入れてあげるから、ここへお座り」


 老婆が、ヤギのミルクで作った濃厚(のうこう)なお茶を入れてくれた。


 ロイとマーティが老婆の正面に並んで座ると、両端に少年が二人ずつ座る。


「疲れが取れるよ」白い陶器(とうき)のカップに入れて一人ずつ渡していくので、受け取るロイが「そういえば、お婆さんにはシュールの声が聞こえるんですか?」


「ああ、聞こえるよ。だから、あの男たちから買い取ったんだよ」そう聞いて老婆がただ者でないことを知り、警戒(けいかい)した目付きになる。


「あなたは一体、何者なんですか?」と聞いたとき、独特の(にお)いが(ただよ)ってきた。

「なんだ、この匂いは?」マーティは顔をしかめたが、ロイは初めて()ぐ匂いではなかった。

「この匂い。どこかで()いだことがあるぞ」考えこむロイの目に、老婆が持つカップの中身が映る。


 濃い緑色のお茶。


「そのお茶はお師匠様が飲んでたものだ! では、あなたは、あなたは予言者ですか?」

「そうだよ。あの星から出て何年経つだろうね。ずいぶん遠くに来てしまったよ」

「そうだったんですか。まさか、こんな所でお会いするとは思いませんでした」


「ところで、あの系星で何か起こったのかね?」

「エッ?」

「ラディウス・ソリッシュを持ってるということは、あの方に会いにいくんだろう?」

「ラディウス・ソリッシュ? この剣のことですか?」

「おや、剣の名前を聞いてないのかい?」

「はい。この剣を持っていけと渡されただけです」


「そうかい。では、この剣がどういうものかも知らないんだね?」老婆は考えると「ミルダシアは、私に会うと予言してたのかもしれないねえ」フフッと笑い「この剣の説明をする役目を(まか)されたということだね」座りなおすと「この剣がどこから来たのか知ってるかい?」


「はい。その、ミルダシア、お師匠様から、アミークスと呼ばれる方から預かったものだと聞いてます」


「そう。ミルダシアがあの方からその剣を受け取ったとき、次に来るときは、このラディウス・ソリッシュを持ってきなさいと言われたんだよ」ここで、あの緑色のお茶を飲む。


「ラディウス・ソリッシュとは、この宇宙を創造した古代の神々が、それぞれの力の象徴(しょうちょう)として作ったと言われてる五つの聖剣の一つで、自然のエネルギーを集め、それをプラズマにして放出すると言われてるんだよ」


「これが聖剣の一つなんですか? 確かにプラズマを放ちますけど」

「もうその剣の力に助けられたんだね?」

「はい」


「しかし、その名を迂闊(うかつ)に口にしてはいけないよ。悪人が持ったら、この世界を支配しかねないほどのものだからね」


「剣の名前を知ってる人が他にいるんですか?」


「もちろんだよ。あんたたちのような若者は知らないかもしれないけど、手をこまねいて(すき)(ねら)ってる(やから)はどこにでもいるからね」


「わかりました。気を付けます」

「それでは、あの系星で何が起きたのか話しておくれ」


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