8-1 管理人夫妻
ロイはまず、自分たちがどうしてここに来たのかを話し、死体を発見したときの様子を説明すると「あの剣はあなたのものだったんですか」ルーサンが驚く。
「では、改めてお聞きしますが、早朝、何か物音を聞きませんでしたか?」ここからは私設警察のブラントが仕切る。
「私は全然、気付きませんでした」ルーサンが繰り返すと「そういえば、何時頃だったかしら。空が明るくなってきたころだと思いますけど、階段を駆け下りる足音を聞きました。何やら急いでいるような感じでした」ルーサンの妻クラリーが思い出しながら話す。
「きっと犯人でしょう。その他に、何か気付いたことはありませんか?」
「そうですね。一人ではなく、二、三人の足音だった、というくらいでしょうか」
「十分です。これで犯人は複数ということがわかりました。他に気付いたことはありませんか?」
「さあ、他には」
「そうですか。では、何か思い出したらお知らせください」
ブラントたちが部屋から出ていくと、ロイたちもお礼を言ってアパートから出た。
外では野次馬たちが遠巻きに取り囲み、いろいろと噂を立てている。
聞きこみに行っていた数名の警官がブラントのところに戻ってきていたので、ロイたちは話を聞こうと、アパートの前で待っていた。
報告を聞いたブラントが新たに指示を出し、警官たちが走っていくとロイたちのところへきて「目撃者が出ましたよ。薄暗かったので顔はハッキリ見えなかったそうですが、背格好は覚えてたので、早速、手配しました」
「僕たちにも、犯人の特徴を教えてもらえませんか?」ダメもとで聞いてみると、予測していたようで「我々に任せてください」とすぐに言い返してくる。
「僕たちは剣を探しにきたんです。犯人を見付けたらお知らせしますから」
「これは我々の仕事です。犯人は銃器類を所持してる可能性があります。危険ですから、無闇に動き回らないでください」
「あの剣はとても大切なものなんです。もし他人の手に渡ってしまったら、取り戻すことができなくなってしまいます」ロイが食い下がると「しょうのない人だなあ」困った顔をするが、意気込みに押されて話してくれた。
「二、三十代の男が三人、周りを気にしながら走り去っていったそうです。一人はガッチリした体格で、もう一人は痩せ型でヒョロリとしていて、もう一人はスキンヘッドのようだったそうです」
「ありがとうございます!」
「とにかく、犯人を見付けたらすぐ我々に知らせてください。絶対、捕まえようと無茶なことはしないでください」
「わかりました」お礼を言うと二手に分かれ、剣を取り扱うだろうと思われる店を当たりつつ、犯人と思われる男たちを見掛けなかったか聞いて回ったが、どちらも収穫がなかった。
午後七時。
私設警察署の前に戻ってきたロイたちは、一日中走り回っていたのでヘトヘトになっていた。
聞き込みにいっていた警官たちも、脚を棒にして次々と戻ってくる。
「今晩はどうするんですか?」ブラントがそばに来るので「さっきのアパートの管理人さんが空き部屋を貸してくれるそうなので、そこに泊ります」
「そうですか。では、明日は朝八時から会議を始めますので」
「はい! ありがとうございます!」




