6-3 ストレンジタウンの少年達
一通り片づけが終わると、ダイヤースに剣のことを聞く。
食後のコーヒーはドリップ式で淹れたもの。少年たちはミルクティーを飲んでいる。
「あれは、食料を調達しに行ったときだった。やかましいオヤジの店から出てきたビルドたちとすれ違ったんだ」
ロベージが「ブレスレットがあった貴金属店のオヤジのことだよ」と説明するので二人が頷くと「店から出てきたときすごく嬉しそうな顔してたから、きっと上物が盗れて、いい金になったんだと思った」
「いい金になったろうな」腹ただしくなるロイ。
「その時ビルドが「これはもっといい金になる」と、カードーンが持ってる、布に包まった細長いものを叩いたんだ」
「どうやら、シュールは大人しくしてたようだな」不思議に思うロイがマーティを見ると「様子でも見てたのかもな」
「いつもアイツらに金を巻き上げられてたから、今度は俺が盗ってやろうと思って、アイツらのあとを付けてったんだ」と言ったところでミルクティーを飲む。「しばらく行くと雑貨屋に入ったからあとから入って、陰に隠れて隙を狙ってたら、カードーンが財布を出そうと台の上にその布を置いたんだ。チャンス! と思って、金を払ってる隙に、その布を持って逃げたんだ」
「偉いぞ、ダイヤース!」クレスが褒めるので「人の物を盗むのは悪いことだ。褒めるな」マーティが叱ると「アイツらが盗んだ物を盗ったっていいじゃないか」反論する。
「盗めば同罪になる。アイツらと同じでいいのか?」
「そんなのヤダよ」
「ではやめろ」
「で、その後どうしたんだ?」ロイが話を戻すと「逃げてる途中で布がずれて中が見えたんだ。とてもきれいな青い剣で、これならすごい金になると思った。でも、剣がないことに気付いたアイツらが追い掛けてきて、途中で脚を撃たれて、その剣を河に落としちゃったんだ」
「河に落としたのか!」ロイが大声を出す。
「河沿いを走ってるときに撃たれて、転んだときに落としちゃったんだ」
「……そうか。で?」
「アイツらすごく慌てて、舟を探しに行っちゃったから、その隙に逃げてきたんだ」
「参ったな」ロイは頭を抱えると「奴らは見付けてるかもしれないな」
「可能性は五分五分だな」マーティは冷静に分析して「とにかく、その場所へ行ってみよう」
ダイヤースに剣を落とした場所を聞くと「ロベージ。わかるな?」
「うん。案内するよ」
「俺たちも一緒に行く」クレスが立ち上がるので「二人は残ってダイヤースの面倒を見ろ。あとは付いてこい」クレスにお金を渡すと彼が残る者を決め、残りの四人が付いてくることになった。
クレスの家からさらに南へ下っていくと大きな河にぶつかる。
そこから下流に沿って進み、目的の大木近くまで行くと、一隻の舟が川面に浮いているのが見えてきたので、ロイたちは河沿いに建つ塀のかげに隠れて様子を伺っていると、少しして男が二人、河の中から出てきた。
「ビルドとカードーンだよ」ロベージの言葉に「アイツらか」二人の顔を確認するロイが、怒鳴りあっているのを見て「あの様子だと、まだ見付けてないようだな」
「ここら辺はけっこう深いし底が泥だから、剣みたいな重いものだと、埋もれて、見付けるのは難しいと思うよ」以前、漁師の手伝いをしたことがあるというローマンが説明する。
「アイツらが諦めて引き上げないかぎり、探せないな」ため息を吐くロイ。
「あの様子からしたら、当分、諦めそうにないぞ」
二人が考え込むと、ローマンが「この河は貝がたくさん獲れるんだ。もしかしたら、誰かの網に引っ掛かってるかもしれないよ」と言うので「アイツらが舟を調達してる間に、誰かが貝を獲ってたかもしれないというのか?」マーティが確認すると「その可能性はあると思うよ」
「マーティ、先にそっちを当たろう」
「船着き場はこの先だよ」ロベージが下流を指すので「よし、行こう」下流へ向かって走っていく。




