5-1 剣の行方
「思わぬところで意外な発見があったな」ブレスレットを見るマーティ。「これが三千五百万?」
「金持ちだな、マーティ」
「ロイも同じだろう? ところで、あのネックレスとブローチ、どうしたんだ?」
「あれは、ベルナーテの当主から、困ったときに使ってくれと貰ったものなんだ」
「ベルナーテ家は鉱山脈を持ってたな。なるほど」
「さて、ロベージ。次だ」
それから数軒見て回ったが、剣はどこにも引き取られていなかった。
やがて日が暮れてきた。
「これだけ探しても見付からないなら、盗んだアイツらがまだ持ってるのかもな」
疲れて道端にしゃがみ込むマーティが剣の在処を予測すると、隣に座っているロイは、返事をせずに考え込んでいる。
「どうした?」
「今、ふと思ったんだけど、なんでシュールは何もしなかったんだろう?」
「どういう意味だ?」
「シュールはプラズマを放電できるのに、どうして持ち去られるとき、その技を使わなかったんだろう?」
「そういえば以前、セージがそんなことを言ってたが、本当なのか?」
「ああ、マーティにはちゃんと説明してなかったな。セージを助けに地下基地へ行ったとき、西端の部屋からトラックを置いてきた断層まで穴をあけたろう? あれはシュールがプラズマを放ってあけたんだ」
「ああ、あの時の。どうやってあけたのか気になってたが、シュールがやったのか。そうなると、なぜ使わなかったのかは本人に聞いてみなければわからないが、何か理由があるはずだ」
「そうだな。それにしてもどこにいるんだ? チンピラのところで大人しくしてるとは思えないし」
「案外、どこかでプラズマを食らわせて、奴らがのびてしまってるのかもな」
「それはあり得る」
「まあ、仮にそうだとしても、いずれ気付くはずだ」
「持ち運びできなくて、どこかに置いてあるのかもしれない」
「売られた痕跡がないから、その可能性は高いな」
「となると、奴らを見付けるほうが早いか」
「ロベージ。盗んだ奴らの居場所を知ってるか?」疲れてグッタリしている彼に聞くと「住んでる所は知らないけど、たむろってる場所なら知ってるよ」
「十分だ。そこへ案内してくれ」
「それより、俺、腹減ったよ」お腹の鳴る音がする。
「そういえば腹減ったな。先に夕飯を食べにいくか」腰を上げるマーティ。
こんな所にしては、なかなかおいしい料理屋へ入った。
黙々と食べる三人に対し、店主の女性が「いい食べっぷりだねェ! 見てると気持ちがいいよ!」ニコニコしながら空いていくお皿を片付けていく。
「ご馳走さまでした。おいしかった」お茶を飲むマーティ。
「お腹、はち切れそう」大満足のロベージ。
「さあ、食後のコーヒーを飲みにいくか」立ち上がるロイ。
会計を済ませて外に出ると「こんな所でコーヒーを飲むのか?」マーティが渋い顔をするので「食後のコーヒーは欠かさないんだ。多少マズくても我慢するよ」
「奴らがたむろしてる店、カフェバーもどきの何でも屋だよ。コーヒーがうまいかは知らないけど」
「カフェバーじゃ、期待しないほうがいい」ため息を吐くマーティ。
「それでは、普通のコーヒーを飲みにいくか」苦笑するロイ。
「俺、ホットミルクでいいよ」一人笑顔のロベージ。
三人はさらに下へ降りていく。




