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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第三章 アグリモニー星
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4-2 質屋巡り

 

「見事な彫刻だろう? きっと凄腕(すごうで)の細工師の作品だろうね。それに、幻と言われてるシルバーバイオレットの水晶がこの大きさで使われてるなんて驚きだよ。しかも、違うデザインの細工物が二つあるところがすごいだろう?」


「これ二つでいくら?」

「たくさん買ってくれたから考えるけど、安くしたとしても、相当金を持ってないと買えないよ」


「で、安くていくら?」

「そうだな……二つで七千万、てところだな」

「ハ?」

「ひとつ三千五百万。これでもだいぶ安くしてるよ」

「いくらなんでも(けた)が多いだろう!」マーティが吹っ掛けられたと思い、切れ気味になる。


「さっきも言ったように、この宝石は幻と言われてるほど希少(きしょう)価値が高いんだよ。さっきのペンダントの目にも使われてたけど、こっちのブレスレットは、さらに大きいものを含めて数個使われてる。どこで採掘されたのか教えてほしいくらいだよ」


「だからといって、ブレスレット一つにその値段はおかしいだろう!」

「お客さん、この宝石の価値を知らないね。ネットで調べてみな。出てるから」


 そう言われてロイがバックからタブレットを出して調べると、採掘元不明の鉱石(こうせき)として、数点が存在する希少宝石と出ていた。


「採掘元不明だとさ」

「まあ、驚きはしないな」

「どうする? 七千万を盗まれて、それを買い戻す必要あるか?」

「ないだろう」

「しかし、僕たちのものだという証拠がない」


「あるぞ」マーティがバックからタブレットを出して、保存されている写真を見せる。

「これは、出発前に行った影の森であの二人に会ったとき、みんなで撮った写真じゃないか」


「そうだ。あの後、セージから送られてきただろう?」写真をめくっていくと、ミルたちと一緒に写っている写真に、それぞれ腕に着けているブレスレットが写っている。


「日付も入ってるしアルバスたちのブレスレットも写ってるから、同種類のブレスレットとして証拠になる」

「よく気付いたな」

「目立つブレスレットだからな。写真を見たとき、証拠写真だとセージと話してたのを思い出したんだ」


「さて、どうする?」

「これを警察に持っていけば、盗品を売ったとして、店は取り押さえられるだろうな」

「お客さんたち、何者なんだよ」話を聞いていた店主の顔が青ざめる。

「話を聞いててわからないか? 僕たちは盗まれた物を取り戻してるんだよ」

「そのブレスレットは俺たちの物だ」写真を店主に見せると「ほかにもブレスレットがあるのか?」

「そっちか」


「わかったよ。でも、警察は勘弁(かんべん)してくれ。それに、俺も大金を出して買ったんだ。その対価がないと店が潰れてしまうよ」

「現金取引なんだろう?」ロイが確認すると「この世界は全部現金取り引きだよ。振り込み記録なんて危ないものは残さない」

「しかし、帳簿は付けてるはずだ。本当に七千万払ったのか見せてもらおう」とマーティが言うと「それは……」


「ぼったくったんだろう?」

「安く買い取ったのか。では気兼ねなく返してもらおう」マーティがブレスレットを取ると「それでも三百万は払ったんだぞ!」店主は奥から帳簿を持ってくると、買取欄に記載されているブレスレットの項目を見せるので「三百万は本当らしいな」確認するロイ。


「それにしても、本当にブレスレットに付いてるこの石は、希少価値がある宝石なのか?」マーティが宝石を見ると「それは俺が保証するよ。鑑定項目(かんていこうもく)()ってきちんと調べたからな」

「なら、その言葉を信じよう」左腕にブレスレットをはめる。


「このまま持ってくのもしのびないから、これを二つ置いてくよ」ロイがバックからまた布袋を出してブローチの箱を二つ取りだし、ショーケースの上に置くと店主はルーペで品定めを始め「いいのかい? お得意様にこういう細工物が好きな人がいてね。きっと喜ぶよ。それに、さっきのネックレスもそうだったけど、金の質が最高クラスだよ。これで十分だ」


 店主が満足そうな顔をするので、それを機に店から出た。


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