4-1 質屋巡り
「すごい所だな」
賑やかな上界から坂道を下っていくと、そこは薄汚れた世界だった。
大都市の裏に必ずある、ならず者が集まる地区。
「一件目はあそこだよ。時計を専門に扱ってるんだ」
壊れかけた看板が今にも落ちてきそうな古ぼけた構えをしている、メイン通りから一本奥まった所にある店を指す。
中も古くなっているが、防犯装置が付いていてガードはしっかりしていた。
「見せてもらうよ」
ロイが奥に座っている店主らしい中年の男に声を掛けると、二手に分かれて陳列棚を端から見ていく。
「ロイ、あったぞ」
マーティのところへ行くと、指さすところに二人の腕時計が並んで置いてあった。
「オヤジさん、この腕時計いくら?」奥にいる店主に声を掛けると、ゆっくり出てきて「ホゥ、お客さん、いい目を持ってるね。この腕時計は、今日仕入れたばかりの上物だよ」
(だろうな。数時間前に盗られたんだから)腹立たしく思いながらも交渉を始めると、押し問答の末、いくらか値切って買うことができた。
「お客さん、こんな所に来るような人に見えないけど、買い物がうまいね」
ジロジロと見る店主から腕時計を受け取ると店から出た。
「盗んだその足で捌いたな」腕時計をはめるマーティ。「うまくいけば全部取り戻せそうだな。ロベージ、次だ」
「こっちだよ」三人はさらに街の奥へと入っていく。
二件目はわりときれいな、賑やかな通りに面した店だった。
「ここは貴金属専門の店だよ」
中に入ると、様々な貴金属がところ狭しと並べられている。
カウンタ―の奥にいた店の主人らしき初老の男が出てきて「お客さんたち、初めて見る顔だね」と、笑顔だが探りを入れているように見るので「ここに掘り出しものがあると聞いてね。寄らせてもらったんだ」ロイが笑顔で答えると「そうかい。ゆっくり見てってくれ」ニコニコして近くの椅子に座る。
また二手に分かれて端から見ていくが、目的の物はなかなか見付からない。
しばくすると、ロベージがロイの上着を引っぱって「あそこの棚、まだ見てないよ」指さすほうを見ると、奥まった所に頑丈なガラスケースが置いてある。
マーティを呼んで中を見ると、紫色のビロードの上に鎮座する一角獣のペンダントがあった。
「ご主人、この一角獣のペンダントいくら?」声を掛けると店主は驚き「そのペンダントを見付けたのかい?」立ち上がると「立派な細工だろう? なかなか手に入らない上物だから、かなり値が張るよ」と言うので肩掛けのバッグから小さな布袋を取りだし、中から金のネックレスを出すと交渉を始める。
同型のネックレス三本でほぼ交換となり、一角獣のペンダントを取り戻すことができた。
「いくらなんでも高すぎるだろう」文句を言うマーティ。
「お客さん、このネックレスをどこで手に入れたんだい? こんな質のいい上物、今まで取り扱ったことがないよ」店主は嬉しそうにルーペで丹念に見ている。
その後、ロイの指輪を見付けたので交渉しようとしたら、破格値で取引してくれた。
「お得意様にはサービスするよ。そうだ、いい物があるんだ。きっと気に入るよ。今日、そのペンダントと一緒に仕入れた物なんだけど、見てみるかい?」内緒話をするかのように小声で話し掛けてくるので「ぜひ!」ロイが乗ると「ちょっと待ってな」奥の部屋へ戻っていく。
少しして出てくると、持ってきた手箱をショーケースの上に置いて蓋をあける。
そこには、ソレルのブレスレットが並んで置いてあった。




