2 アグリモニー星
「誘導波、確認」
“そのまま百二十五番ゲートに入ってください”
レジーナ・マリス号は、メガロポリスの巨大なスペースエアポートへ入っていく。
「ドッキング完了。メインエンジン停止」セイボリーがエンジンのスイッチを切ると「ブリッジ接続」ハッチを開くとブリッジが接続される。
ロイとマーティは艦から降りると入星チェックを済ませ、ゲート正面にあるガラス張りのカフェに入ると、あいている窓際の席に向かいあって座った。
窓の外には、天に向かって伸びる様々な形をした高層ビルが立ち並んでいるのが見える。
温かいおしぼりを持ってきたウエイターにコーヒーを注文すると『すごい! 下が見えない! ここは何階にあるの?』シュールの声が頭の中に響く。
「シュールはこういう所に来たことないんだ」
『私が棲んでた所にはこんな高い建物なかったし、ミルダシアの所にいたときは、暗い部屋の中にいたから』
「ミルダシア? ああ、お師匠様か。そういえば隠し部屋にいたな。あそこにどの位いたんだ?」
『どの位だろう? 百年くらいじゃないかなあ』
「百年! そういえば、お師匠様がアミークスに会いに行ったのがそのくらい前だから、そうなるか」
「百年も部屋の中にいたら退屈したんじゃないか?」驚きながらもマーティが聞くと『そうでもなかった。けっこう話し声とか聞こえてたから』
「それにしても、シュールは一体いくつなんだ?」
『私たちは人間より長生きだから、あまり年は気にしないんだ』
「そうなのか」
「ところで、前から気になってることがあるんだけど、シュールには周りのものがどう見えるんだ?」
『どうって?』
「剣と同化してるわけじゃないんだろう?」
「それは俺も気になってた」
窓ガラスに向かって、テーブルの右側にマーティ、左側にロイが座っている。
剣はまた短剣の大きさになってロイの上着の内ポケットに入っているので、窓の外は見えないことになる。
『そうだね。剣の中の世界にいると言ったほうが近いかな』
「やっぱり、理解するのに時間がいるよ」
「俺もだ」苦笑するマーティ。
「考えてもわからないから、次。その中から出られるのか?」ロイがさらに聞くと『ここでは無理』
「どこでなら出られるんだ?」
『それは……』言い渋るので「話してはいけないことにでもなってるのか?」
『今は、言えない』
「わかった。話せるときが来たら教えて」
そこへ、ウエイターがコーヒーを持ってきた。
一口飲むロイが「まあ、こんなもんか」呟くと「こういう所でうまいコーヒーを期待するのはやめたほうがいいぞ」とマーティに言われ、まあまあのコーヒーを飲み終えると席を立った。




