24 再び大宇宙へ
その日の夜、ロイたちは艦のリビングにいた。
「もう少し手伝いたかったんだけど、途中で抜けることになってすまない」ロイが謝ると「ここまで手伝ってくれただけで十分だ」気にするなと言い返すアルバス。
「そうだぜ。ロイのお陰で早く決着ついたし、俺たちのことまで対応してもらえるなんてさ。まったく予測してなかったよ」
セージたちは、統治者ルズロフの計らいで、宇宙管理局員へ復帰できることになっていた。
「独立についてはまだ調整が必要だが、前向きな対応をしてくれると約束してくれたので、今より待遇が良くなる。まずは大きな前進だ」
独立派の中心人物として動いていたアルバス。やっと肩の荷が下りたのだろう。表情に安堵感が出るが「ところでマーティ」声のトーンを落とし「ロイと一緒に行くんだってな」
「ああ。やらないといけない事ができた」
「どんな事なんだ?」
「それは……」言葉を濁すと「地元の系星が新しい一歩を踏みだした大事なときに、どこへ行くんだ?」
「アルバス。こんなときにメインメンバーのマーティを引き抜いて本当に申し訳ない。でも、どうしても彼の力が必要なんだ」代わりに答えるロイを見ると「あの、森に棲む二人のようにか?」
思いも寄らないことを聞かれ、表情を変えると「ロイの旅の目的は、石化の犯人を見付けることと、石化したものを元に戻すことだと思ってたが、違うのか?」
「それは……」
「確かに、石化に関するデータだけが消去されてたことに関しては謎が残る。ピンポイントすぎるからな。だから、その件の謎解きをあの花に依頼したんだろう?」
「ああ……」
「で、どうだったんだ?」
「……芽が、出なかった」
「……そうか」
「解決……できないのかも、しれない」
「……どうだろうな。もしかしたら、これから進む先に答えがあるから、わざわざ花を咲かせる必要がないということなのかもしれない」
「どういう意味だ?」
「マーティを連れて進もうとしてる先が、花に依頼した謎解きの答えかもしれないということだよ。先を示さなくてもわかってるだろう、ということなんじゃないか?」
「……すごい解釈だな」
「マーティの家は代々語りべの家系だ。たぶん、ロイの旅に必要な何かを知ってるか持ってるんだろう?」マーティを見ると「……そうだ」と答えるので「……わかった。旅が終わったら戻ってくるんだろう?」
「もちろんだ」
「なら、気を付けていけよ」
「……すまないな」
「僕が謝る! こっちの都合で、こんな大事なときに連れ出してしまうんだ。本当に申し訳ない!」
「そこまで言う必要ねえよ。こっちは大丈夫だから、気にしないで行けよ」
「悪いな、セージ」声を掛けるマーティに「お前の分まで頑張ってやるよ」彼の肩を叩く。
翌日の午後二時半。
ロイたちは艦の外にいた。
「早く旅を終わらせて戻ってこいよ」声を掛けるアルバス。
「戻ってきたら四人で飲みに行こうぜ」ロイの肩を叩き「土産話を楽しみにしてっからな」と言うセージに「あとを頼んだぞ」声を掛けるマーティがアルバスを見ると「気を付けていけよ」
午後三時。
定刻どおりにレジーナ・マリス号は惑星アエースドを出発した。
コントロール室。
前方スクリーンには手を振るアルバスたちの後ろで、三当主たちが手を振っているのが映る。
「早く復興してほしいな」
「大丈夫だ。今まで以上のものができる」
スクリーンから五人の姿が消えると赤茶けた大陸が映り、やがてそれも雲で見えなくなった。
大気圏突入で席に着き、暗黒の宇宙へ出ると「次の目的地へ急ぐぞ」クルーに声を掛ける。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
今回で第二章が終了します。
次回より第三章が始まりますので、引き続きお楽しみください。
それでは、次話でお待ちしています。




