4-2 闇のマニプレイト
「しかし、石の中の世界の魔導師が使ってたぞ」
『呪文を唱えて動かしていましたの?』と聞かれてその時のことを思い出すと「いや、確かあのとき、魔導師は蓋を開けたと言ってた」
『では、像が持つ本来の力を使ったにすぎませんわ』
「なんてことだ……」ガッカリするマーティ。
「話は終わりましたか?」声を掛けてくるインサニア。
「クソッ!」睨み返すマーティ。
「さて、あなたたちはどこへ行ってもらいましょうか」インサニアはまたあの薄ら笑いを浮かべ「そうそう、先に言っておきますが、この宮殿から出ることはできませんよ。さっき、すべてのドアを封印しましたから」
『その言葉を聞くかぎり、コモンに関しては深く調べられたみたいですが、わたくしに関しては、大して調べられていませんのね』
「そんなことありません。あなたのこともちゃんと調べました」
『まあ、そうですの。でも、わたくしにはそうは思えませんわ』
「それは心外ですね。どうしてですか?」
『さっき、この宮殿にあるドアをすべて封印したとおっしゃいましたわね? わたくしたちは、ここから逃げるつもりはありませんのよ』
「私を倒すまで?」
『そうですわ』
「この状況で、まだそういうことが言えるあなたはすごい方ですね」クスクス笑いだすので『なにがおかしいんですの?』
「これは失礼。ただ、あなたたちの立場が危ういというこのときに、呑気に私と話をしてるものですから、つい」と言いつつ蓋を開け「リガビス・エオス(奴らを縛れ)」と言って蓋を閉めると、木箱から光る鎖が出てきて、ワームウッドたち目がけて飛んでいく。
アニスの前に立つマーティ。
しかし、その鎖は彼らの身体をすり抜けてしまった。
「なんだと!」目を疑うインサニア。
「どうなってるんだ?」自分の身体を見るマーティ。
「私たち、どうなって、しまった?」混乱するアニス。
その時、平然としているワームウッドが『残念でしたわね。さっきあなたがおっしゃったとおり、危険な状況に置かれているわたくしたちが、呑気にあなたとお話をしている暇はありませんわ』
インサニアはワームウッドのところへ行くと、手を差し伸べる。
「フフッ、あなたは本当にすごい方だ。私の目を欺くんですからね」インサニアの手がワームウッドの身体をすり抜けていく。
「なに、起きた!」大声を出すアニス。
『大丈夫ですわ。落ち着いてください』
「でも……」
「ここは彼女に任せよう。俺たちはなにもできないんだ」混乱状況にあるアニスに声をかけ、落ち着かせる。
「ここに異次元空間を作るとは。どうりでコモンがあなたに残りの者を託したわけだ。しかし、そちらからも手が出せない」
『やっぱり、わたくしに関してはなにもご存じありませんのね』
言い返すワームウッドを睨むと、そんな彼をしり目に少し大きな声で『我は「大地の宮殿」のワームウッド。大地の女神ナトゥーラの名において我は呼ぶ。冥府の后デテイネ。闇の女神マニプレイトの力にて、亡者の国へ連れ去られし者たちに、ここまでの道を!』
言い終ってしばらくすると、また出入り口のドアに穴があき、少しすると、そこからコモンたちが出てきた。




