9-1 口伝の人物
「そこに、どうして復讐の女神像が必要なんですか?」
『今まで何回もその像の力について話しただろう?』
「像の力ですか?」
『そうだ。あの像の一番の力は、隠れてる者を捜しだすこと』
「アッ!」
『理由がわかったか? あの像は、対象がどんなものであれ、必ず捜しだすことができるんだ』
「例えそれがアミークスでも」
『そうだ。だから、あの像は門外不出だったんだ』
「なるほど」大きく頷き「でも、僕と入れ替われば会えるはずですよね? なのに、なぜ危険を冒してまで、復讐の女神像を盗りにいったんですか?」
『それは……尋ね人になれば必ず会えるという確証がないからだ』
「エ? そうれはどういう意味ですか?」
『君も三つの門を通ってきたからわかると思うが、門の場所やキーマンを捜すのに苦労しただろう? 通らなければならない門はまだ残ってる』
「なるほど。最短で行けるようにしようとしたのか」
『あの像があれば、門の場所もキーマンも瞬時にわかる』
「そして、アミークスがいる場所も」
『……そうだ』
「直接アミークスのところへ行けるんですか?」
『それはわからない。彼女がどこにいるか知ってる者がいないから、判断できない』
「彼女? アミークスは女性なんですか?」
『いや、性別もハッキリしない。両方の説がある』
「あなたでもわからないんですか?」
『ああ。私たちでもハッキリしたことはわからない』
「本当ですか?」
『本当だ』真剣な顔をするので「では、なぜ彼は、彼女、いや、これは正しいかわからないから、アミークスに会いに行こうとしてるんですか?」
『あの方について、何か聞いてないか?』
「ラディウス・ソリッシュを渡されたとき、少しだけ聞きました」
『どんなことだ?』
「この剣を保管してた人は予言者の長老で、以前、アミークスに会ってます。その時、この剣を託され、いつか自分の元へ来ることがあるだろうから、その時はこの剣を持ってくるよう言われたそうです。そして、アミークスから授かったという力の一つを貰いました」
『どんな力だ?』
「浮遊する力です」
『やはりその能力を貰ったか。水の宮殿で役に立ったろう?』
「はい。水に浮く宮殿と言われるとおり、宮殿内は、浮くことができなければ歩けませんでした。でも、どうして僕がその能力を貰ったと知ってるんですか?」
『尋ね人に最初に授けられる能力だからだ。続きを話してくれ』
「その時アミークスの居場所を聞きましたが、他言できないと言われて教えてもらえませんでした」
『あの方のことは、迂闊に口に出せませんのよ』
「知ってます。僕も他言するなときつく言われましたから。でも僕たちは、アミークスがどのような方なのか、知る権利があります」
『そうだな』
「教えてください。どういう方なんですか?」




