8-3 考察
「闇の精霊界からルーが出てくれば、あなたを呼びにいくだろう……」言葉を切るので「どうしたの?」バーネットが聞くと「なぜルーが呼びにいくのを止めなかったんだ?」
「どういうこと?」
「彼を強敵と思ってるなら、こんな大事なときに呼びにいかせないだろう。偽物のルーに書簡を送らせてまで騙してきたんだから、そのまま騙し続けてればいいわけだ。なのに、なぜわざわざ来るように仕向けたんだ?」
『それは、復讐の女神像の正当な所有権を、取ろうとしているからですわ。コモンから奪おうとしているんですのよ』
「では、人質を取ったのは、彼に取引に応ずるようにするためと言うんですか?」
『そうですわ』
『アイツ、何様だと思ってんだ? 呆れてものが言えねえぞ』鼻で笑うグリーク。『コモン様と同等に戦える奴がいるとしたら、兄貴ぐれえだ』
『そのグレイターを、七十年も閉じ込めているんですのよ、グリーク』
『でも! それは……』
『コモンも、そのことに気付いているのでしょう?』
『……まあな』
「なぜ、奴はそこまでして復讐の女神像に固執するんですか? 確かに話を聞いてすごい力を持ってると思いますが、管理者であるあなたに戦いを挑んでまで、所有したいと思うのはなぜですか?」
『それは……』言葉を詰まらすので「理由に思い当たることがあるんですね?」すると急に押し黙ってしまう。
「あなたも、理由に心当たりがあるのではないですか?」ワームウッドに振ると、彼女も黙ってしまうので「ここまで来て、内緒事はやめませんか?」それでも口を開こうとしないので「では、別のことを聞きます。なぜ奴は、三枚の鍵やラディウス・ソリッシュを欲しがるんですか?」
『それは……』
「なぜ僕と入れ替わろうとするんですか?」
顔を逸らすコモンとワームウッド。
「奴の最終目標は何なんですか? あなた方はそれを知ってるはずだ」
しばらくの間、沈黙が訪れる。
「グリーク。グリークはどうなんだ?」
『俺は……多分そうだろう、と思うくらいだぜ』
「それは?」
『わりい。俺からは言えねえんだ』
「話してもらえないのであれば仕方ない」コモンを見ると「それでは、僕の推測が正しいか答えてください」
『君の推測?』
「そうです。奴は、僕が会いにいこうとしてる、アミークスと呼ばれる人物のところへ行こうとしてますよね?」
『それは……』
「違うんですか?」
『まあ、このことはすぐにわかるな』ため息を吐くと『そうだ』と答える。
「でも、それは最終目標ではないですよね?」と言うと驚いた顔を向けるので「その先があるはずです」
『フフッ』コモンは笑って頭を抱えると『頭の回転の良さから気付かれるだろうと思っていたが、ここまで見透かされるとは思わなかった』真っ直ぐロイを見ると『ある程度話さないと、引き下がってもらえそうにないな』
「ここまで来たら」
『わかった。話せるところまで話そう』ワームウッドに『構わないだろう?』と聞くと『そうですわね』頷くので『そう、君の言うとおり、奴の目標はラディウス・ソリッシュの本当の持ち主だ』




