5-3 序章
『でも、そうしたらコモン様が不審に思われますよね?』
『ルーから書簡が来たんだ。地下の改装を行ってるから、しばらくの間ドアを封鎖すると。私はそれを鵜呑みにしてたんだ』
『私の偽物が?』
『君が闇の精霊界にずっといたならば、書簡を送ってきたルーが君と同一人物のはずがないからな』
『……そうですね』
「妖精の道から迷いの道へ行かせて再びドアの部屋へ行かせ、またドアの中に閉じ込めようとしたというの?」バーネットが確認すると『そうだ』すぐに答える。
「でも、私たちはドアから出る方法を知ってるわ」
『同じドアの中に入れられると思ってるのか?』
「アッ!」
『ドアの部屋を管理してるのはニゲラなんだぞ。今度は、滅多なことでは出られないドアへ入れるだろう』
「……そうね。そうよね」
『とにかく今は、グリークたちが「時の宮殿」に戻るのを止めなければならない』
『知らせるにしても、今、どこにいるのかわかりません』焦りだすルー。
『確認してありますわ。彼らは今、陽炎の一族が住む水の宮殿にいますわ』
「三枚目の鍵があるところだわ!」
『フォンス様の宮殿に三枚目の鍵が保管されてるのか。なるほど。それでグリークたちを同行メンバーにしたのか』
『コモン様、どういう意味ですか?』
『あそこがどういう宮殿か、ルーは知ってるだろう? もし偽者があの宮殿に入ったらどうなる?』
『偽者が入ったら? アッ!』
「ルー、どうなるの?」
『偽物だとすぐにバレてしまいます』
「どうして?」
『陽炎の一族は、泉の神フォンス様が支配なさっている真水から生まれた一族です。その真水から作られた水の宮殿は、鏡のようにものを映すんです。目に見えている姿ではなくて実体を、その者の本性を映すんです。ですから、尋ね人の偽者があの宮殿に入ったら、すぐに正体がバレてしまいます』
「じゃあ」
『奴は途中で本物と偽物が入れ替わるように仕組み、三枚目の鍵を取ってこさせるようにしだんだ。三枚目の鍵は、本物の尋ね人でないと手に入れることができないからな』
「でも、ラディウス・ソリッシュを持つ者が尋ね人になるんでしょう?」
『ラディウス・ソリッシュの精霊が認めた者だ』
「ああ、そうだったわね。じゃあアイツは、偽物では三枚目の鍵を手に入れることができないことを知ってて、ロイたちが三枚目の鍵を取りに行くように仕向けたというの?」
『ロイ?』
「ああ、尋ね人のことよ」
『そうか。しかも、君たちが密かに動いてると思わせるために、気付かないフリをしてる。つけいる隙があると見せて、作戦どおりに誘導してる』
「そんな……」
『それに、今まで奴が「時の宮殿」から出た形跡がない。たぶん、自分の存在を多数の者に認知させないためだろう。ニゲラを操り、動かしてるのはそのためだ』
『そして、すべてを「時の宮殿」に集めようとしているんですわ』
「自分は動かず、周りを動かして欲しいものを集めてたというの?」
『そうだ』




