22-2 不都合な結果
作業を始めてから二週間が過ぎた八月十日。
ロイたちは再びツバイチ家を訪れていた。
「作業が順調に進んでいるようなのでそろそろ引き上げようと思い、ご挨拶に伺いました」
アルバスが代表して伝えると「そうですか。いろいろとご助力いただき、ありがとうございます。今度は我々がヴィラパス系の再建をお手伝いさせていただきます」統治者ルズロフが答え「罪滅ぼしには足りませんが、亡くなられた方の慰霊塔を作ろうと話し合ってたんですよ」ツバイチ家の当主が続けると「資材はこちらで用意します」さらにベルナーテが続ける。
「お心遣い、ありがとうございます」素直に頭を下げるアルバス。
「これくらい当然です。私たちでできることは何でも言ってください」言い返す統治者ルズロフが「出発はいつですか?」と聞くので「明日の朝、出発します」
「では、すぐにこちらも準備を始めます」
玄関に向かう途中、統治者のルズロフに話があると引きとめられたのでマーティたちを先に行かせ、彼らが見えなくなると、ヴィラパス系の再建に目途が付いたら、三人でファルネス系を訪ねることになったと話してきた。
「話をきちんと伝えなければいけなかったので、二人には君のことを話さざるをえなかったんだ」
「話を聞いて驚きました。まさかあなたが」
「内密に願います」ベルナーテが言いそうになるのを慌てて止め「これからは、父と直接話してください」三当主が頷くと、一礼してマーティたちのあとを追った。
次の日の午前九時。
レジーナ・マリス号がヴィラパス系の主星アエースドへ向けて離陸すると、続いて資材を乗せた貨物船があとを追う。
アエースドにはその日の午後四時に着き、見るも無残な街を前にして三当主は膝をつき、いつまでも頭を下げていた。
復旧作業に取り掛かるための準備を始めたとき、作戦会議室にいるロイにアルバスが声を掛けてきた。
「残ってる住民に呼び掛けたいんだ」
そのため、会議室の通信器を使うよう言うと彼はお礼を言って席に座り、チューニングを合わせると、リゾート開発計画が見直されること、独立について話し合いの場が設けられることと、艦が着陸している場所を伝え、集まるように呼び掛けた。
翌朝。
大勢の人達が艦の周りに集まってきていたのでロイはすぐに艦を開放し、ケガ人のケアに努める一方、食事などの提供をはじめた。
「食べ物のアレルギーがある人は、ここの紙に書いて持ってるトレーに置いてください!」
セージたちは重機を使って崩れているビルなどの瓦礫を取りのぞき、生き埋めになっていた人達を教会へ運ぶと、身元確認後、手厚く葬っていく。
日に日に資材や人材が到着し、別の系星に避難していた住民も、ニュースを聞いて次々と戻って来はじめた。
作業を始めてから五日後。
ロイとしてはそろそろ出発時期を考えなければならなくなったが、身動きが取れないため、統治者ルズロフに対応してくれるよう依頼すると
「すぐに医療船を手配しましょう。他に何かあれば言ってください」
「ありがとうございます」
この頃になると測量がほぼ終わり、街の完成予想図もできはじめて、更地になった所から着工の準備が始まり、慰霊塔は墓地の中にある見晴らしのいい丘の上に建てられ、三当主は毎日、花を捧げて祈りを続けた。




