3-2 冥府の宮殿
今度はバーネットに『こちらが、冥府の宮殿の管理者であるコモン様です』
「初め、まして」
『先ほどは驚かせてすまなかった』再度謝罪するとルーに『なぜここにキーマンを連れてきたんだ? ここは人間が来る場所じゃない。君も知ってるだろう?』
『その説明をする前に、確認させていただきたいことがあります』
『確認? 何のだ』
『復讐の女神像を、どなたかにお貸し出しされましたか?』
『あれは門外不出の像。貸し出すことなどできないと知ってるだろう? なぜそんなことを聞くんだ?』
『実は……』
「時の宮殿」で起きていることを話すと『なんだと! 確認してくる!』慌てて席を立ち、急ぎ足で部屋から出ていく。
『まあ、お客様がいらしてるというのに、あんなに取り乱されて』先程案内してくれた女性が、お茶を持って入れ違いに入ってきて『何か、大変なことが起きてるんですか?』テーブルにカップを置きながら聞いてくる。
『あなたもお気付きになってないんですか?』
『エッ? どんなことでしょうか?』
「それは、彼が戻ってきたらわかりますから」バーネットが答えると『この方を疑ってるんですか?』
「確認できるまで待ったほうがいいわ」
『でも……わかりました』
『あの、何が起きてるんでしょうか?』二人の様子を見て心配そうな顔をすると、血相を変えたコモンが戻ってきて『大変だ! 復讐の女神像がなくなってるぞ!』
『あの像は、インフェリース様のお使いの方がお持ちになられたではありませんか』コモンの慌てように驚きながらも、お付きの女性が答えると『何だと? そんなこと聞いてないぞ!』
『ちゃんとお話されたとおっしゃってましたけど……』
「それはいつですか?」バーネットが話に入ると『確か、七十年くらい前です』
「アイツだわ」ルーを見ると頷く。
『インフェリース様のテネブリス・ペタスムをお持ちになっていらっしゃいました』
『テネブリス・ペタスムだと!』怪訝そうに聞き返すコモン。
「ねえ、インフェリースって誰? テネブリス何とかって何?」隣のルーに聞くと、コモンが『インフェリース様はこの冥府の宮殿の管理責任者で、テネブリス・ペタスムは、インフェリース様お気に入りの烏帽子だ』
「烏帽子ですって!」
『どうした?』
「アイツはモスカールに、形見の帽子を取ってきたいと言ってたのよ」モスカールから聞いた、インサニアが来たときのことを話すと『申し訳ございません! 私のミスです!』お付の女性が膝をついて頭を下げる。
『もういい。君のせいじゃない。あれを持ってきたのなら、私でも信じる』
『コモン様……』




