3-1 冥府の宮殿
そして、石畳の通路を歩いていくと、突き当たりに大地の宮殿と同じ青銅の扉が現れた。
その扉の前にいくと、ルーが右側の太い木枠に付いている取っ手を引き、中にある太い紐を引くと『少し待っててください』
「早く来てくれないと凍死しそうよ」手をこすり、吐く息が白くなっている。「大地の宮殿もそうだけど、どうしてここだけこんなに寒いの?」
『それは、ここが次元の境目だからです』答えるルーも、手をこすり合わせている。
「じゃあ、妖精の道は別次元にあるの?」
『そうです』
「よくわかったわ。わかったから早く中へ入れて!」ジッとしていられなくてウロウロしはじめると、取っ手の上にある小窓から黒いベールをかぶった女性が顔をだし「まあ! ルー様! どうしてこちらからおいでになられたんですか!」
『訳は、コモン様にお会いしたときに、お話します』
『そうですか。すぐにお開け致します』
少しして扉がゆっくり開くと、二人は中へ飛びこんだ。
「寒くて震えが止まらないわ」バーネットが手に息を吹きかけると『すぐに暖かい飲み物をご用意しますから、お上がりください』ルーからランプを受けとり、火を消して床に置くと階段を上がっていく。
大地の宮殿内は日の光が差し込んで明るい印象があったが、ここは薄暗く、異質な雰囲気が漂っていた。
石の通路は幅はそれほどないが天井が異様に高く、その天井から、年季が入った古めかしいシャンデリアが等間隔にあり、その灯りから教会のような雰囲気を感じる。
そして、廊下の両脇の壁には様々なモチーフの油絵が飾られていて、絵の間に古めかしい縦長のランプが付いていて、ダークブラウンの木製のドアを照らしていた。
案内役の女性は、中央に噴水がある大きな部屋へ二人を連れていき『こちらでお待ちください』と言って部屋から出ていくので、二人は噴水前にあるソファに腰かけ、コモンが来るのを待った。
「ムードたっぷりね。コウモリが集団で飛んできてもおかしくないわ」別の意味で鳥肌が立ち、ゆっくりと部屋の中を見回していると『ルー! まだ冥府の宮殿に通じるドアを開放しないのか?』
漆黒の髪を長く伸ばした長身の男が部屋へ入ってくるなり大声を出すので、バーネットが飛び上がって驚く顔を向けると『アッ、これは失礼。他にお客がいたことを忘れてた』
「い、いえ、大丈夫、です……」
『驚かせて悪かった』向かいに座って謝罪すると、改めて同じことを聞いてくる。『まだドアの封鎖を続けるのか?』
『詳しくお話する前にご紹介いたします。彼女はバーネットさんで、尋ね人の一人、第三の炎陽の門のキーマンです』
『尋ね人だと!』バーネットを見ると『そうか。噂で尋ね人が現れたと聞いてたが、ここまで来たのか』




