表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第二章 「第一の門 / 鏡の泉の門」
55/1026

21-3 対決

 

 あの花のことをそのまま言うことはできないので、グレンに話したとおり、未開拓星域で採取(さいしゅ)され、輸入されてきた植物に未知のウイルスが付着(ふちゃく)していたらしく、それが人間の欲望を増幅(ぞうふく)させたと話した。


 それが原因で争いが起こり、地表から植物が消え、海は死に空気は汚れ、星自体が危険に(さら)されていること。


 また、自分たちの系星だけでは収まらず、植民系星のヴィラパス系を、住民の許可なしに勝手にリゾート計画を立て、それが元で独立戦争に発展し、多くの犠牲者が出ていること。


 その余波(よは)を受け、ロイの出身系星で、有名なリゾートエリア内のファルネス系を、石化ウイルスを使って住めなくしたことはおろか、石化してしまったものを元に戻せないことを話すと、三当主たちは頭を抱え込んだ。


「我々は、なんてひどい事をしてきたんだ」顔を上げる統治者ルズロフはロイを見ると「さぞかし私を恨んでることでしょう。だから先ほど、私を見る目に殺気を宿らせておられたのか。当然のことですな」


不躾(ぶしつけ)なことをしてしまい、申し訳ありません」頭を下げると「あなたが謝る必要はありません! 謝らなければならないのは我々です。いや、どのように謝罪したらいいか……」再び頭を抱えると、ベルナーテが「我々は、なにを浮かれたことを言ってたんだ」と声を震わせる。


「申し訳ございません!」


 統治者ルズロフの娘ナスタが立ち上がり、ロイたちに向かって深々と頭を下げると、他の二人の令嬢も立ち上がって同様に頭を下げ、ベルナーテの娘エルダーがアルバスのところへ行くと「わたくしたちでできることは何でも致します。何でもおっしゃってください!」


 他の二人の令嬢もエルダーの横に立つので「わかりました。これから説明しますので、一旦、席に戻ってください」と声を掛け「ツバイチ家のご当主、申し訳ないのですが、皆さんにコーヒーのお替わりをいただけますか?」

「あ、はい。すぐに用意します」


 コーヒーが運ばれてくるとアルバスはカップを取り「さあ、いただきましょう」飲むよう(うなが)すとゆっくり口を付ける。


 全員が飲んでホッと息を吐くと「落ち着きましたか?」カップを置くと顔を見回し「では、これからやっていただきたいことをお話します」


 海域を所有している統治者ルズロフには、海洋汚染の調査と浄化剤の開発を。

 ベルナーテには空気汚染の分析と浄化剤の開発。


 空気汚染が改善され、植物が植えられるようになったら、各々が所有している植物を空き地や川沿いなどに、まんべんなく植えること。


 ツバイチは所有している広大な土地に優先して植樹すること。


 各令嬢たちには、鉢植えを住民に配るよう話す。


「あとは何をすればいいでしょうか?」統治者ルズロフが聞いてくるので、今度はセージが話を進める。「ヴィラパス系の、リゾート開発計画の見直しをお願いします」

「そうですね。わかりました」

「独立については、改めて話し合いの場を設けてください」

「もちろんです」と聞いて、マーティたちの顔に笑みが浮かぶ。


「他には?」さらに聞く統治者ルズロフに「もう一つあります」ロイが声を掛ける。「ファルネス系の、石化についての資料をお願いします」

「ああ、そうですね。早速取り揃えます。他には?」


「あとは?」アルバスがロイたちを見ると無いと首を横に振るので「以上となります。それぞれの進め方はお任せします。我々は艦にいますので、何かあれば、グレンさんを通して連絡をください。では、これで失礼します」


 玄関のところで当主たちに見送られると車に乗り、屋敷をあとにする。



 艦に戻るとリビングへ行き、中央テーブルに座るが誰も口を開かない。

 怒鳴りつけてやろうと勢い込んで行ったのに、相手の人の()さに文句の一つも言えず、スッキリしないからだ。


「こんなものなのか?」中心となって話していたアルバスがふと()らすと「こんなもんじゃねえの」セージが席を立つので「どこ行くんだ?」

「腹減ったから、飯食いに行く」腕時計を見ると、午後一時半になろうとしていた。


 食後、ロイは一人、自室に閉じこもっていた。


『複雑な気持ち、わかる』事の成りゆきを見ていたシュールが話し掛けてくる。

 短剣の大きさになって、ロイの上着の内ポケットに入っていた。

「参ったよ。会ったらどうしてくれようかと考えてたのに」


 争いの原因となったフォーテュムはまだ咲いている。


「親父になんて話したらいいんだろう」

『ありのままを話したほうがいいよ』

「……そうだな」


 この後、誰もロイに連絡してこなかった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ