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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第九章 「時の宮殿」での戦い
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29-2 南の塔

 

「こんなこと聞いたら失礼かもしれないけど、悪の道へ進んでしまった者はいないのか?」

『もちろんいるよ。けど、そいつらはすぐに抹消されたよ』

「どうやって?」


『呪文が使えないように、能力を消してしまうんだ』

「せっかく覚えたことが水の泡になるのか」

『仕方ねえよ。掟を破ったんだからな』


「ところで、どのくらいの者がトップまで行けるんだ?」

『そうだなあ。トップクラスまで行けんのは、五百分の一くらいかな?』

「恐ろしいくらいの狭き門だな」


『こればっかは持ってる才能によるからな。いくら勉強しても、素質がなければ限界が来る。登りつめることはできねえ』


「素質ばかりは、持って生まれたものだからどうしようもないな。ところで、グリークはどの位置にいるんだ?」

『俺は、と言うより、俺たちは全員トップクラスだよ』


「本当か? それはすごいな。じゃあ、みんな同レベルなんだ」

『いや。トップクラスでもランクがあるんだ』

「じゃあ、誰が一番強いんだ?」

『兄貴だよ。なんと言っても「時の宮殿」の主人だからな』


「そう言われればそうだけど、あのお爺さんからは想像できないな」

『確かに、あの姿見たら信じらんねえだろうな』クスクス笑う。


「じゃあ、二番目は誰なんだ?」

『モスカール、と言うと思ってんだろう?』

「違うのか?」

『あとはみんな同じレベルさ』


「なぜ?」

『みんな同じ位置にいるからだよ』

「同じ位置?」

『この事は話すと長くなんから、時間があったら話すよ』


 その後、様々な精霊が行きかう通路を進んでいくと、内部の雰囲気が変わった。きっと南の塔へ入ったのだろう。

 その塔は、中世紀に建てられたような雰囲気で、お揃いのマントを着た騎士たちが出てきそうな感じがする。


『ところでロイ。剣の腕はどうなんだ?』

「そこそこには扱えるよ。一応、星間区武術大会で入賞したことがある」


『入賞か。せめて表彰台に立つくれえじゃねえとな』難しい顔をすると『で、その大会は大々的にやってるもんなのか?』

「まあね。僕が住んでる系星が所属してる、宇宙連盟、第五百五十五星区、主催の大会だから」


『ふうん、地区大会みてえなもんか?』

「そうだな。そのあと総合大会があるから」


『ロイのところが所属してる星区には、どのくらいの系星があるんだ?』

「いくつだっけ? この前の大会前に隣と合併したから、十二系星になったかな?」

『エエッ!』


「それでも中規模クラスだけど」

『で、入賞って、何位だったんだ?』

「四位。準決勝戦で、折れた相手の剣先が右足の甲に刺さっちゃって、病院直行」


『すげえ痛そう。でも、防具を付けてやったんだろう?』

「もちろん。でも、試合中に金具が壊れて、甲のプロテクターが外れちゃってさ。そこに刺さったんだ」


『それ、すごい確率だぞ』

「ああ、何かの策略じゃないかと思ったよ」


『じゃあ、もし、そのアクシデントがなかったら、もっと上に行けたのか?』

「それはわからない。あの時の相手はかなりの強者(つわもの)だったし、優勝候補の一人に挙げられてたからな」

『ロイも候補の一人だったんじゃねえか?』


「まさか。僕は護身用に習ってただけだから、練習量が違うよ。で、グリークはどうなんだ? 話ではかなりの腕前だってことだけど」

『俺は、精霊界の大会で優勝したくれえだ』


「優勝しといてくらいと言うなよ。精霊界で一番ということだろう?」

『七十年以上前のことを自慢してもしょうがねえだろう?』

「十分、自慢できると思うけど」


『大分腕が落ちてんから無理だよ。ま、とにかく、対戦相手のレベルが俺たちより低いことを祈ろうぜ』

「自信ないよ。世界が違う大会だから、どんな感じなのかわからないし」

『そんなこと言ってらんねえんだぞ。わかってんだろう?』

「わかってるよ」


『まあ、殺されはしねえから、安心しな』

「できるかよ」



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