21-2 対決
食べ終わったアルバスが「ご馳走さまでした。とてもおいしくいただきました。お二人とも素晴らしい腕をお持ちですね」褒めると「お口に合ってよかった。よろしければいつでもお越しください。喜んでお迎えしますよ」ツバイチ家当主が笑顔で答える。
「我々も、久しぶりにこの味を楽しみましたな」統治者ルズロフが笑顔でベルナーテを見ると「本当に。アーネット嬢は、また腕を上げられたようですな」
「皆様のお口に合ってよかったです」はにかんだ笑顔を見せると「エルダーが着けているブローチ、素敵だわ。おじさまの作品でしょう?」
「そうだよ。私の最新作だ」ベルナーテが渋い声で答える。
「今度行われる、わたくしのピアノリサイタルのときに着けるものなのよ。お父様にお願いして作っていただいたの」
「リサイタルを開かれるのですか。もちろん、招待していただけますな?」統治者ルズロフの言葉に「もちろんですわ。ぜひお越しください」
「エルダー嬢のピアノの腕前はミッド系一なんですよ。あなた方もぜひいらしてください。素晴らしい音色に感動しますよ」統治者ルズロフが話を振ってくるので「ぜひお聴きしたいですね。それに、見事なでき栄えのブローチ。プロ顔負けの腕前ですね」アルバスが話を振ると「金細工は私の趣味なんですよ。ご希望の形があればどんなものでも作りますよ」ベルナーテのさわやかな笑顔は、感じのいい印象を受ける。
「そういえばナスタ嬢。今度開かれる、ミッド系美術コンクールに出展する作品の進行具合はいかがかな?」ベルナーテが統治者ルズロフの娘に声を掛けると「もうすぐ描き終りますわ」笑顔で答える。
「彼女はこの若さでプロの画家なんですよ。今度行われるミッド系美術コンクールはプロ対象の大会で、彼女は二年連続で大賞を受賞してるんです。今度優勝すれば、前代未聞の三年連続受賞という、快挙を成し遂げることになるんですよ」
「なんか、自慢大会に来てるみてえだな」セージが呟くので隣のロイは苦笑した。
「ルズロフのおじ様はチェスがとてもお上手なの。今度、おじ様主催のチェストーナメントが行われますのよ。よろしければエントリーされてみてはいかがですか?」今度はベルナーテの娘エルダーが統治者ルズロフを褒める。
彼らはこの星がどんな状態にあるのか、危機感をまったく感じていない。
美術コンクールやピアノリサイタルなど開ける余裕などないのに、呑気に話ができるほど、現状を把握していないことに驚きを隠せない。
にこやかに話す当主たちとは対照的に、沈んだ表情になっていくアルバスたちに気付き「どうやら、こんな話をしてる状況ではないらしい。一体、何が原因でこのような状態になったのか、お話しいただけるでしょうか」統治者ルズロフが先を促すので「わかりました。お話します」アルバスが話しはじめる。




