27-1 封印されていた守護獣
『「時の宮殿」は精霊界の中枢。当然、中は精霊界。もし封印されてなければ、入ったらすぐに現れるはずだからね。でも、いまだに現れないということは、そういうことになるだろう?』
「宮殿の庭でニゲラと話をしたときだろう。あの時しかチャンスはなかったからな」
「アイツがニゲラにやらせたの?」
「だろうな。彼女は今、奴に操られてるからな」
「マーティは気付いてたの?」
「ああ」
「いつ?」
「ヴィラへ行ったとき、俺たちに目もくれなかった精霊たちがいただろう? シュールが出てこれない話になったのを覚えてるか? その時だ」
「ああ、あの時ね。でも、どうして話してくれなかったの?」
「変だと思ったが、なぜなのかわからなかったからだ」
「でも、どうして、そんな事、したの、かしら?」
「奴の狙いは俺たちと入れ替わること。もし彼らが一緒にいたら不可能だ」
「コストマリーたちは精霊界のことを詳しく知ってるだろう? 当然、中枢である「時の宮殿」のことも知ってるはずだよ。もし以前と違ってることに気付いたら、警戒して、僕たちを宮殿の外へ連れ出すだろう。そうなったら、奴の計画は台無しだからね」
「私たちだけなら、この世界について何も知らないから、赤ん坊を扱うより簡単でしょうね」
「悪知恵が働く、手がかかる赤ん坊だ」マーティが捻くれたことを言うと「アハハッ、確かにそうね。転んだら何かしでかすわ」同意するバーネット。
「シュールのこと、わかっても、どうして、敵は、シーホリーたちのこと、知ってた?」
「ペンダントの絡繰りを知ってればわけない。モスカールたちが知ってるんだ。ニゲラだって知ってるだろう」
「そうね。でも「時の宮殿」、精霊界だと、知ってれば、入ったとき、気付いたのに」
「それは無理だ。幻想の星について、何も情報がなかったからな。しかも、この宮殿のこともわからなかった」
「第三の口伝も、ここのこと、書いて、なかった。知るすべは、なかった、ということ、ね」話し疲れてお茶を飲むと「シュール、大丈夫、かしら?」
「ちょっとやそっとじゃヘコたれないと思うけど、アイツが何をするかわからないから、心配ね」バーネットもシュールのことは気に掛けている。
『奴の狙いは、ラディウス・ソリッシュの精霊に自分が尋ね人だと認めさせること。彼女をうまく丸め込まなければならないから、ヘタなことはしないだろう。きっとご機嫌を取ってるよ』モスカールの説明に「一緒のロイ、偽者と、バレてるから、シュールを説得する、無理、と思う」
「今頃、プラズマでも食らわせてるんじゃない?」
「大暴れしてるところが目に浮ぶな」マーティが、怒鳴りながらメチャクチャに放電しまくっているシュールを想像すると「スイッチが入ったら、力尽きるまで止めないだろうな」さらに恐ろしい状況を想像するロイが頭を抱え「宮殿を壊さなければいいんだけど」
「見晴らしのいい吹き抜けがあちこちにできそうだな」
『ちょっと待て! 見晴らしのいい吹き抜けってどういう意味だよ!』グリークが慌てて話に入る。




