26-2 反撃 準備開始
時折、月明かりが差しこむ森の中を、ランプの明かりを頼りに歩いていくと
「モスカール。宮殿内に着いてから変装したほうが良かったんじゃないか? このままだと裾が汚れてしまう」
マーティが踏んづけた裾の汚れを叩いていると『今の服に慣れてもらうために、先に変装してもらったんだ。バーネット。裾が汚れない歩き方を教えてやってくれ』
彼女が手を上げると、再び歩きだす。
暗がりに目が慣れてくると「出口はまだ遠いのか?」モスカールの後ろを歩くロイが聞くと『そうだね。岩山を迂回しないといけないから、もう少し掛かるね』
一列になって細い道を歩いていくと、その岩山が近くなってきたのか、木の根を地中深くに伸すことができないらしく、地表に盛り上がってきだした。
『ここから先は足元に注意してくれ』注意している間に、数名が躓いていた。
さらに三十分近く歩いたころ『ここら辺で少し休もうか。着慣れない服で歩いてるから疲れたろう?』モスカールが近くに倒れている木に腰かける。
「大丈夫か?」腰を降ろすマーティが、息が上がっているロイを気遣うと「ちょっときつい」額の汗を拭うので『気付かなくて悪かった。大丈夫か?』モスカールが傍に来ると「ああ、大丈夫だよ」
『薬はちゃんと飲んどるかね?』近くの岩に腰掛かける主が聞いてくるので「飲んでますよ。とっても苦い薬をね」
『お茶を持ってきました。飲みますか?』ルーがバックから水筒をだしてコップに注ぎ、差しだすので「ありがとう。助かるよ」
「ルー、私にももらえるかしら?」バーネットが声を掛けるのでみんなに配りだす。
一息ついたところで、アニスが隣に座っているモスカールに「先程、ルーさん、私たち、着てる服、ここに住んでる、精霊から、調達してきた、言ってました。この中、精霊界、なんですよね?」
『正確に言うと、闇の精霊界だよ』
「普通、精霊界とは、違うんですか?」
『精霊界に普通というのはないよ』
「では、特殊、ということ、ですか?」
『まあ、特徴はあるけど』
「どういう、特徴、ですか?」
『ここは、見てのとおり太陽がない闇の世界。闇といっても、月があるから真の闇じゃないけどね。この世界に住む精霊は、日の光に当たると消滅してしまうんだ。だから、夜の神が管轄してるんだよ』




