22-1 ロイの捜索
『とにかく、アニスに最初に頼んだのは、尋ね人が入ったドアに再び運んでもらうことだった。本物の尋ね人を捜しに行かなければならなかったからね。だから、偽者の鏡には移らないでアニスの鏡へ移り、運んでもらったんだよ』
「どうやってロイがいたドアの世界に入ったの? 偽者はドアから出たあと、鏡を取り外してドアを閉めてしまったのよ。あの鏡がないとドアは開けられないんじゃないの? それに、出るための鍵もないでしょう?」
『だから、鏡を使ってドアを開けるのは尋ね人達だけだと、前に説明しただろう?』
「アッ、そうだった。他の人は鏡を使わないのよね。じゃあ、どうやって移動したの?」
『使者が持ってる石版のスペアを持ってるから、それで開けてもらったんだ』
「スペアを? どうして持ってるの?」
『使者に取りに行かせたんだよ』
「どうやって?」
『使者が寝てる間に鍵を隠して、スペアを取りにいってる間に偽物を作ったんだ。そして、持ってきたスペアと偽物をあとですり替えた』
「なるほど。スペアとすり替えたのは、バレる確率が低いからね?」
『そのとおり』
「じゃあ、石版でドアを開けて、アニスの鏡から外へ出たのね?」
『そうだよ。ドアから出るための鍵は、谷間に住む一族の長老が予備を持ってるので、それを貸してもらったんだ』
「そうなの? あ、もしかして、あの世界の審査員はあの長老なの?」
『副審査員というところかな。とにかく、私たちは再び尋ね人を捜しにいったんだ』
「そういえば、ロイはどこにいたの?」
『バーネットが働いてた、館の裏にある牢の中だよ』
「エエッ! あそこにいたの?」
『これぞ灯台下暗し。偽者を仕立てて本物は変装させ、閉じこめる。偽者を先に見付ければ、それ以上捜さないから、万一、偽物の正体がバレたとしても、偽者がいた場所に本物がいると思わないだろう? だから、見付けるのに時間が掛かる』
「人の心理を逆手に取ったのね。でも、よく館の中を捜したわね」
『そこに辿り着くまで大変だったよ。主は前回同様、谷間に住む人々のところで待っててもらって、私とグリークの二人で捜しにいったんだ。
隣の領地へ行ったとき、同じ仕事を与えられたから助かったよ。勝手がわかってるからね。
グリークは、私の仕事場と同じ建物の中で行われてる剣術の指導員の仕事を与えられたから、打ち合わせしやすかったよ』
「グリークは、指導できるほどの腕なのか?」ロイが意外そうな顔をすると『その姿からじゃ想像できないだろう?』モスカールが揶揄うので『なんだよ。外見なんか関係ねえだろう?』
「そういえば、魔獣の世界、いたとき、大きな食虫植物、一撃、倒してた」彼の剣さばきを思い出し「そのこと、考えれば、グリーク、剣の達人、言われても、納得できる」
「ヘェ、それ程とは、すごいな」ロイが褒めると『別に、あれくらい初歩レベルだから、褒められても嬉しくねえよ』




