20-1 事件の詳細
『宮殿にいた主と私、グリークは容姿を変えられて力を封じこまれ、別々にドアの中へ閉じ込められたんだ』
「なぜ外見を変える必要があったの?」バーネットが前から気になっていたことを聞くと『私たちは宮殿を管理してたんだよ。いくら隔離されたドアの中とはいえ、そのままの姿で閉じ込めたら、何か起きたとすぐにわかってしまうだろう?』
「どうして?」
『ルーの姿を見ただろう? もし彼女がドアの中に入ってきたら、どうなる?』
「すごく目立つわね」
『シルバーの髪と瞳は、宮殿管理者の証なんだ』
「そうなの? じゃあ、すぐにわかってしまうわね。ということは、モスカールたちも、元は彼女と同じだったの?」
『そうだよ。でも、髪と瞳の色を変えても、私たちの顔を知ってる者は大勢いる。だから私は顔と声を、グリークは外見を変えられ、主に至っては、体形まで変えられてしまったんだ』
「そうなの」理由を聞いて納得すると改めて主とグリークを見て「確かに、宮殿管理者と言われても、信じられない姿よね」
「さっき、別々のドアの中に閉じ込められたと言ったが、モスカールは主と同じところにいたんだろう?」マーティが聞くとバーネットが「ああ、そうよ。私が入ったドアの中に一緒にいたわ」
『それは、私が主がいたドアへ移動したからだよ』
「どうやって?」
『使いの者に運んでもらったんだ』
「使いの者?」
『各ドアの中には、その世界を取り締まる責任者がいるんだよ。そして、何か緊急を要することが起きたとき、外と連絡が取れるよう、通信機を渡してあるんだ』
「じゃあ、それを使って呼び出したの?」
『それは、パスワードを知ってる責任者しか使えないよ』
「じゃあ、どうやって呼んだの?」
『緊急を要することが起こるまで待った』
「いつ起こるかわからない事態を待ったの?」
『そうだよ。最初は何か起そうと考えたんだけど、連絡しなければならないほどの事を起すと、奴に勘ぐられてしまう恐れがあるから、何か起こるまで待つことにしたんだ』
「言われてみればそうだけど、緊急事態って、そう頻繁に起こらないでしょう?」
『まあね。でも、ほとぼりが冷めるまで大人しくしてたほうがよかったし、緊急事態が起きたとき、スムーズに事が運べるよう、環境を整えておく必要があったからね』
「どうしたの?」
『まず、責任者の屋敷に潜り込まなければなかったから、中での仕事を探して、一年後には、彼の秘書まで登りつめたよ』
「モスカールなら、秘書に就くことなんか簡単だったろう?」ロイが聞くと『造作もねえよ。宮殿の管理をしてたときも、兄貴の秘書として切り盛りしてたんだからな』
「なるほどね。よくわかるよ」深く頷き「それで、いつ頃、何が起きたんだ?」




