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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第二章 「第一の門 / 鏡の泉の門」
52/1021

20 修正


 翌朝、午前七時。


『ロイ! 起きて! 花が咲いてるよ!』

 シュールの大声が頭の中に響くので「夕べ遅かったから、もう少し寝かせてくれよ」

『昼寝すればいいでしょう! 早く起きろ!』

「昼寝って。まったく。あれ、いい香りがする」


 寝ぼけた目でベッド脇を見ると、サイドテーブルに置いてあるフォーテュムが一斉に咲いていた。


「すごい! 本当に花の色がグラデーションのようになってる!」飛び起きて見ていると来訪(らいほう)のチャイムが鳴るので「まったく、こんなに早く来るなよ」渋々ベッドから出てドアを開けると、アルバスたちが立っていた。


「気になって寝らんなかった」セージは徹夜したらしい。眼が充血している。

「セージに叩き起こされた」眠そうに目をこするアルバス。

「二人に叩き起こされた」大欠伸をするマーティが「花は咲いたか?」と聞くので「ああ、すごいことになってるよ」


 寝室に入った三人は、花の存在感に圧倒されて眠気が吹き飛んだ。


「俺、花のことはよくわかんねえけど、普通、下から順に咲いてかねえか? いっぺんに全部は咲かないだろう?」

「まあ、普通じゃないからな。気にするな」深く考えないようにするマーティ。

「きれいだな。それに、危険な甘い香りがする」アルバスの言葉を聞いて「そうだな。思考を乱されそうな香りだよ」同意するロイが「コーヒー淹れるからリビングに移動しよう」隣の部屋へ移動する。


 ソファに腰掛けると、これからのことについて話し合った。


「とにかく、無事、開花までこぎつけたわけだ」アルバスが話しはじめる。「本当に、花に関しての記憶が消えてるか、現状の確認が先だな」


「それは、グレンの話を聞けばわかるだろう。どの程度まで記憶が消えてるかによって、対応の仕方が変わるだろうから、話の辻褄(つじつま)を合わせるために、都度、内容を確認しよう」ロイが案を出すと全員(うなず)く。


「そういえば、そろそろグレンが起きるころだろう?」腕時計を見るセージ。「部屋に迎えにいったほうがいいんじゃねえか?」アルバスを見ると「そうだな。ロイ、グレンを迎えにいってくれ。俺たちは、朝食を済ませたら作戦会議室へ行く」


 午前九時。

 ロイがグレンを連れて会議室に入ってきた。


「おはようございますグレンさん。こちらにどうぞ」アルバスが向かいの席を勧めると「おはようございます。失礼します」戸惑い気味に周りを見回しながら指定の椅子に腰掛けるので「これから詳しく説明しますから、心配しないでください」アルバスの言葉にホッとしたのか、表情が少し和らぐ。


 話しながらグレンの記憶を確認すると、フォーテュムに関することがすっぽりと抜けていたので、打ち合わせどおり、この星で悪質なウイルスが繁殖(はんしょく)し、それを駆除(くじょ)したらウイルスに関する記憶が消えてしまったと話した。


「信じがたいことですが、宇宙管理局の方のお話でしたら本当なんでしょうね」


 アルバスたちは独立のために反旗(はんき)(ひるがえ)したことで、宇宙管理局から除名処分を受けているが、説明する内容に真実味を持たせるため、そのことは伏せて、極秘調査のためにリゾート会社の社員として入星(にゅうせい)したと話した。


「管理局の方にそんな真似をさせてしまい、申し訳ございません」頭を下げると「朝起きたとき、どうしてここにいるのか、なぜ服装や髪形、体形まで変わってるのか理由が思い出せず、鏡を見て混乱しました」


「いろいろとあったようですから、深く考えないでください。大事なのはこれからです」

「そうですね。でも、私はこれからどうしたらいいでしょうか?」


「たぶん、お屋敷では大騒ぎになってると思いますので、我々が出向いて説明しますから、他の二人の当主にもご足労(そくろう)いただくよう手配していただけますか?」アルバスの提案を聞いて、グレンは嬉しそうに「ありがとうございます。そうしていただけると助かります。早速、当主に連絡します」部屋の隅へいくと携帯電話で連絡を取りはじめる。


「あの花のことを知ってるのは、当主の家族たちと数名の関係者だけなんだろう? 変わり果てた自分たちの星を見て、どうしてこうなったのか、理由がわからず悩むんだろうな」セージが隣のマーティに話を振ると「だから、(うそ)でもその埋め合わせができることを作らないといけないんだ」


 そこへグレンが戻ってきて「ぜひお越しいただきたいと当主が申しておりますので、これから屋敷へご案内いたします」

「わかりました。早速準備します」アルバスが答えるとみんな席を立つ。


 屋敷へ向かう途中、大型車の後部座席で向かい合って座っていると、窓の外を見るグレンが「こんなひどい状態になったのも、そのウイルスが原因なんですね?」深刻そうに聞いてくるので「もう少し遅かったら、この星は壊滅(かいめつ)してたでしょう」アルバスが説明すると「助けていただいてありがとうございます。全住民に代わってお礼を申し上げます」深々と頭を下げるので「これも我々の仕事ですから」慌てて彼の体を起こす。


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