19-1 新たな味方
先程の草原までは虫一匹いなかったのに、こちらの森に入った途端、奇妙な鳴き声や、草むらを走る小動物らしき生き物を頻繁に目撃するようになった。
「どうしてこの森だけいろんな生き物がいるんだ?」頭上をコウモリのような生き物が飛んでいくので、ロイがビックリする。
「縄張りでもあるのか?」苦手な虫が足に飛んできて、慌てて払うマーティ。
「モスカール、まだ先なのか?」ロイが、疲れが見えてきたバーネットたちに気づき、確認すると『もうすぐ着くから、あとちょっと、頑張ってくれ』と言うモスカールが前方を指すと、うっすらと明かりが見える。
「こんな気味の悪い森の奥に誰が住んでるの?」バーネットが呟くと『着いたら説明するよ』モスカールが返事をする。
明かりは、大木の根元に建っている丸太小屋のものだった。
枝から垂れ下がった何本もの蔦が小屋の屋根に降りてきて、複雑に絡み合っている。
その小屋のドアをモスカールがノックすると、少しして『誰?』中から若い女性の声が聞きかえす。
『ルー、私だ。モスカールだよ』答えるとドアが少し開き『モスカール姉さん?』戸惑う彼女は、長いシルバーの髪と瞳をした小柄な女性だった。
『ルー、無事だったんだ』ホッとするグリークに、さらに戸惑って警戒しはじめるので『ああ、驚かせて悪かったね。私たちは姿を変えられてしまったんだよ。こんな姿をしてるけど、モスカールとグリークだよ』
『エエッ!』
『そしてグレイターだ』
『ルー、久しぶりじゃのう』
『グレイターなの!』
中に入ると居間にあるテーブルへ案内され、そこで、モスカールがロイたちを紹介する。
「彼らが尋ね人達だよ」
『本当ですか? ああ、やっと来てくれたんですね。お会いできてよかった』
「あまり良かったという状態じゃないんですけどね」ロイが苦笑すると『彼が尋ね人だよ』
『まあ、大丈夫ですか?あまりお顔の色が良くありませんね』
『みんな疲れてるから、何か甘い飲み物を用意してくれないか?』
『温かいほうがいいかしら?』
『そうだね』
ルーが奥のキッチンへ行くと、ロイたちに中央テーブルに座るよう勧め、モスカールたちが向かいに座ると、ロイとマーティはアニスとバーネットを間に挟んで座った。
「ねえモスカール。一体どうなってるの? 私たちの知らないところで何が起きてるの?」バーネットが説明を求めると『これから順を追って説明するから』
少し間を取ると『まず、ここがどういう所なのか説明しよう。ここはマルム ソムニウムの世界。この中に入った者は、二度と外へ出られないと言われてるんだ』
「なんですって! じゃあ、私たちは一生ここで過ごさないといけないの?」
『心配しなくても大丈夫だよ。入ってきたドアから出られない、ということだから』
「じゃあ、出口はほかにあるのね?」
『そう。知ってる者は数名しかいないけどね』
「もう、ビックリさせないでよ」ホッと胸を撫で下ろす。




