16-2 すでに仕掛けられていた罠
「なんですって……」
「おや、急に声が小さくなったよ。どうしたのかな?」
言葉を返せず黙りこむと「どうしたんだ? 君たちも同じような像を持ってるはずだよ。どうしてその事を黙ってるんだい? もしかして、内緒にするつもりなのかな?」
「なにを言ってるの? そんな像は持ってないわ」
「君は知らないのか。では、そっちの君なら知ってるだろう?」マーティを見ると「君が入ったドアの世界にあったんだからね」
「なぜそれを知ってるんだ!」
「マーティ、どういうこと?」
「あの中に住む魔導師から、テネブリス・オキュリという像を預かったんだ」
「あの像は、大分前に封印の宮殿から持ち出されていたんだよ」
「どういう像なの?」マーティに聞くと「私が教えてあげよう。あの像はどんなものでも大理石に変える力があるんだよ」
「そうなの?」マーティを見ると頷くので「じゃあ戦えるじゃないの! 降伏するなら今の内よ。それとも石になりたいかしら?」
「石にはなりたくないね」
「じゃあ、大人しく降参しなさい」
「いや、私は降参するつもりはないよ」
「ちょっと待て、バーネット」
「何?」
「なぜ俺たちがテネブリス・オキュリの像を持ってると知ってるんだ?」
「さて、なんで知ってるんだろうね」フフッと笑うので「気持ち悪い笑いはやめてよ」
「これは失礼。しかし、笑わずにはいられないんだよ」肩を揺らしてさらに笑うので「自分の愚かさがそんなにおかしいの?」
「私が愚かだって? 愚かなのは君たちのほうだよ」
「なんですって!」
「ところで、さっきから気になってるんだが、君たちは何人だったかな?」
「どういう意味?」
「人数が足らないんじゃないかと言ってるんだよ」
「何ですって?」振り返ると後ろにはアニスしかいないので、マーティが重厚なカーテンをどかしてドア前を見るが「ロイがいないぞ!」
「エエッ! 彼をどこへ連れてったの!」
「アハハハハッ! 気付かなかったのか? 君たちと一緒にここへきた彼は、偽者だったんだよ」
「なんですって!」
「あのロイが偽物だと!」
「話してあげよう、バーネット。君がモスカールと一緒に、彼を捜しに彼が入ったドアの中へ行っただろう? そして、牢の中にいた彼を見付けた。その彼が偽物だったんだよ」
「ウソ!」
「いつから、モスカールたちが一緒に行動してると知ってたんだ?」睨みつけると「さあ、いつからかな?」
「あのロイが偽者だったなんて」愕然とするバーネット。
「俺たちの行動は筒抜けだったのか」悔しさが込み上げてくるマーティ。




