13-2 特別なドアの部屋
『もう大丈夫ですよ』
ニゲラの声を聞いてゆっくり目を開けると、さっきと違った部屋に立っていた。
その部屋は一面マーブル柄の大理石でできている。
「贅沢な部屋ね」見回すバーネットが「瞬間移動でもしたってところかしら?」マーティに聞くと「床が降りて、地下にでも来たんじゃないか?」と分析する。
『では、進みます』ニゲラが奥へ続く正面の廊下へ飛んでいく。
彼女について部屋から出ると、ヒンヤリした石造りの廊下を真っ直ぐ歩いていく。
途中、左右に伸びる廊下が幾つもあり、何本目かの廊下の先を見るバーネットが「ねえ!人がいるわよ!」右側の通路の奥を指さすと「よく見てみな。あれは人じゃないよ」ロイに言われて再度見ると、宙に浮いている者や飛び跳ねている者がいる。
「何あれ!」指をさすバーネット。
『彼らは精霊だよ』
「じゃあ、ここはシュールがいた所なの?」
『ううん、違うよ』
「でも、精霊界なのは確かよね?」
『……そうだと、思う』
「違うな。精霊界ならば出てこれるだろう?」とマーティが言うので『アッ、そうだよね』
『ここでは出られません』
『精霊界じゃないから?』不思議そうにシュールが聞くと『ここは、精霊界であって精霊界ではないからです』
『ぜんぜん意味がわかんない』
『あなたが住んでいた精霊界と違う精霊界だと言ってるんです』
「胡散臭い」ニゲラの言うことを信じないマーティ。
「悪いけど、私も信じられないわ」マーティの意見に同意するバーネット。
「どうやら、本物の二枚目の鍵は、ここになさそうだな」
『では、戻りますか?』
「戻してくれるのか?」
『戻りたければ』
「戻れば、本物の二枚目の鍵は手に入らない、とか言うんだろう?」
『そうです』
「なら進む」
マーティたちは、こちらにまったく関心を示さない精霊たちの間を通りながら、ニゲラの後について進んでいくと、廊下の突き当りにある小ホールまで来た。
正面の壁に、等身大の下半身が壁に埋もれた女性像が飾られていて、誰に祈りを捧げているのか、両手を組み合わせて俯いている。
その像の肩にとまるニゲラが『第二の門のキーマンの方』
「何?」アニスがぶっきらぼうに返事をすると『あなたが持ってきた左右の水龍のペンダントを、この像の両手の甲に填めてください』
「この像、次の、仕掛け?」
『そうです』
アニスは首から下げているペンダントを外すと像の前に立ち、左右を確認して手の甲にそれぞれのペンダントを填めると像が顔を上げ、後ろの壁の中へ下がっていくと横にずれる。
「すごい仕掛けだな。普通なら、この先に何かあるなんて思わないぞ」ロイが、奥へ続く、真っ暗な廊下の先を見る。




