13-1 特別なドアの部屋
長い石造りの廊下を歩いていくと、左側に中庭が出てきた。
「ここはけっこう日差しが強いな」眩しそうに空を見上げるマーティに「今まで薄暗いところにいたからそう思うのよ」バーネットが振り向いて声を掛ける。
少しすると、中庭に降りられるように数段の階段がついた場所があり、その正面に、広い庭を突っ切るように一本の道が通っている。
そして、その先には小さなヴィラが建っていて、ニゲラはその建物に向かってフラフラと飛んでいく。
「あそこが次の場所なのか?」ロイが聞くと彼女は近くの柵にとまり『そうです』と答えるので足を止め「あの中で何をするんだ?」
『何もしません。あそこは入り口です』
「入り口? どこへ行く入り口なんだ?」
『それは、入ってから説明します』
「また何かありそうだな」マーティに振ると「なきゃおかしいだろう」と返す。
ヴィラの入り口に着くと『第一の門のキーマンの方。あなたが故郷へ戻ったとき、影の森の精霊から新しく貰ったブレスレットを、ドアの左側に刻まれてる彫刻の右脚に填めてください』
そのドアは石灰のように白く、艶のある一枚岩でできており、一対の一角獣が向き合って彫られていて、両扉とも左右の前脚が取っ手のように掴めるようになっている。
「これがこの扉を開ける鍵なのか?」マーティが右腕のブレスレットを見せると『そうです』と答えるので「それはおかしい」反論する。
「これは、さっき入ったドアの中にある、二枚目の鍵を取るために必要だった物のはず。それが、なぜここの鍵になるんだ?」
『それらはあなた方の認証代わり、と言えば納得してもらえますか?』
「身分証明書のようなものだと言うのか?」
『そう解釈されても構いません』
「では、そう解釈する」
『それでは填めてください』
マーティは右腕に填めているブレスレットを外すと扉の前にいき、扉の左側の彫刻の右脚に填めるとその脚が上がり、扉が内側に開いていく。
「脚が上がって勝手に開くのか。先に言ってくれ。驚くだろう」脚が上がっとき、蹴られるのではと思い身構えてしまった。
中に入るとヒンヤリとした空気が漂っていて、なにもかもが眠りについているように静まり返っている。
「静か過ぎてちょっと恐いわね」首を竦めるバーネット。
『それでは、部屋の中央に描かれているサークルの中へ入ってください』
先に飛んでいくニゲラが降りた床の上は、色の違う石が円形に敷き詰められている。
ロイたちはゆっくり歩いていき、円の外側に立つと「何が出てくるんだ?」
『ここから中に入るんです』
「中に?」
「どんな所なのか、連れてってもらおうじゃないか」とマーティが言うので、円の中に入ると足元の床が光りだし、あまりの眩しさに目を開けていられず、目をつむる。




