8-1 アニスの救出 惑わしの世界
ドアを閉めると、ドアの中央にある模様が描かれた場所に鏡をあて、それが填るとマーティに「後ろを向いて目を瞑ってくれ」
「なぜ?」
「彼女たちが出てくるとき、すごい光を発するんだ」
「それは大変だな」納得すると後ろを向く。
少しすると『もう大丈夫だよ』モスカールの声が聞こえてきたので振り返ると「なあ、別の方法はないのか?」ロイが改善を求める。
『こういう仕組みなんだから、仕方ないだろう』こっちも不便なんだ、という顔をするので「移動するのが面倒だな」向き直るマーティに『呪縛を掛けられてしまったんだ、仕方ないよ』ため息まじりに言いかえし『行くぞ』モスカールが歩きだす。
大木の穴から出ると「かなり感じの悪いところだな」鬱蒼とした森を見回すマーティ。
「最初からこんな状態だと、アニスがどうなってるか、最悪の状態を考えといたほうがよさそうだな」難しい顔をするロイ。
「ところで、その小さな爺さんがこの宮殿の主なのか?」マーティがモスカールの横にいる主を見るので『マーティは初めてだったね。そう、彼が主だよ』モスカールが紹介すると『あんたはどこの門のキーマンかね?』背の高いマーティを見上げる。
「第一の門だ」
『おお、そうじゃったな。最初の門か』
『さすがにボケたか』モスカールが嘆くので『ちょっと忘れておっただけじゃ』言い返す主。
『情けない』
『忘れてただけだと言っとるじゃろうが』
『さあ、時間がない。行くよ』モスカールが主の言葉を無視して話を進めると「主はどうしますか?」同情するロイが確認する。
『ここで待っとるよ。ここにいれば、置いてかれることはないからのう』
「……そうですね」
ロイたちは、主を残して薄暗い森の中へ入っていく。
「アニスがどこにいるか、わかってるのか?」森に入ってすぐにマーティが聞くと『いや、聞いてくしかない』
森の中の獣道を歩いていくと話し声が聞こえてきたので三人は声の主を探し、見つけると、モスカールが近づいていって声を掛ける。『話の途中に割りこんで申し訳ないが、聞きたいことがある』
声を掛けられたスミレの花たちは「あら、人型だわ」
「まあ、珍しい」
「聞きたいことがあるらしいわよ」
「何かしら?」
『いや、いい。邪魔したね』踵を返して戻ってくるので、スミレの花たちは、呆気に取られてこちらを見ている。
「なぜアニスのことを聞かないんだ?」意味がわからないロイ。
『人型が来たのが珍しいと言ったからだよ。アニスは彼女たちと会ってない』
「なるほど」
『さあ、次へ行くよ』さらに奥へ進むので後ろを歩くマーティが「すごい聞き方をするな」と言ってくるので「マーティと変わらないと思うけど」
「そうか? 俺のほうが丁寧だと思うぞ」




