4-2 マーティの救出 狭い世界の魔導師
「彼女は誰なんだ?」マーティがロイの隣に座るモスカールに向かって怪訝そうな顔をするので「あとで話すよ。実は大変なことが起こってて、迎えにきたんだ」
「大変なこと?」
「外の世界で何か起きてるのかね?」魔導師が話に入ってくる。
「実は、アクシデントが起きてまして」
「フム、そんな事だろうと思ってたよ」
「どうしてですか?」
「実は、宮殿の主人から、定期的に果物を差し入れてもらってたんだが、ここ何十年か滞っててね。何の連絡もなく突然打ち切られてしまったので、何かあったのではと心配してたんだよ」
「そうだったんですか。だから果物を持っていくように言ってたのか」
「彼に会ったのかね!」
「ハイ」
「無事なのかね?」
「ええ、一応、大丈夫です」
「そうか。何はともあれ無事なのか」ホッと息を漏らすと「それで、一体何が起きてるんだね?」
「それが、ちょっと厄介なことになってまして」
「複雑そうだね。で、さっき、果物を持って行くように言われたと言ってたが」
「ああ、これです。足りるといいんですが」持ってきた大きな布製のバッグをテーブルに置くと、魔導師は早速中を見て「この果物はどこで採れた物かね?」と聞いてくる。
「こちらがゴールドデザート星で、こちらが代償の世界の物です」
「そうか。ゴールドデザート星の物を取り寄せてくれたのか」魔導師が嬉しそうに表情を緩める。
「実は、僕たちの仲間の一人が、シルバーデザート星の出身なんです」
「ホゥ、そうなのか。しかし、助かった。これで彼女も喜ぶだろう」
「彼女?」
「実は、私はここで、動植物の繁殖の研究を行ってるんだよ」
「繁殖の研究ですか?」
「そう。各ドアの中の世界に生息してる動植物は、全部、私が管理してるんだよ」
「遺伝子操作で、それぞれの世界に適合できる動植物の研究をしてるそうだ」マーティの補足を聞いて「それはすごいな」素直に驚く。
「ここにいるもう一つの理由は、いろんな細菌類を扱うので、事故が起きたとき、この世界に住んでる人達に影響が及ばないようにするためなんだよ」
「そうだったんですか」なるほどと頷く。
「その腕を買われて、宮殿の主人から、ある動物の面倒を見るよう頼まれててね」
「ある動物ですか?」
「そうだ。詳細は聞いてないが、ひどいケガを負って運ばれてきてね。助かるかどうかわからなかったんだが、なんとか一命を取り留めてくれたんだよ。あとは回復を待つだけなんだが、食べ物が限られてて、その一つが果物なんだ」
「その動物とはどんな生き物なんですか?」
すると魔導師は話していいものか考え「君たちなら話しても構わないだろう。ペガサスだよ」
「ハ? ペガサス?」
これにはマーティも驚き、ロイと二人で魔導師を見る。




