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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第九章 「時の宮殿」での戦い
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4-1 マーティの救出 狭い世界の魔導師

 

「あなたが魔導師ですか?」ロイが声を掛けると「そうです。どうぞお掛けください」

ソファを勧めるのでモスカールの隣に腰掛けると、向かいに座る彼を見て、どこかで会ったことがあるような気がした。


「どうかなさいましたか?」

「いえ。どこかでお会いしたような気がするものですから」


「そうですか。では、長老のところへ行かれましたね?」

「ハイ。でも、どうしてその事をご存知なんですか?」

「彼は、私の兄なんです」


「お兄さん?」魔導師を改めて見ると「そういえば似てらっしゃいますね。でも、どうしてこんな所に、隠れるように住んでるんですか? しかも魔導師と名乗って」


「一つは、兄と意見が合わないからです。兄は堅物でして、昔からの決まりをかたくなに守ろうとするんですよ。私は新しいことが好きで、いつも衝突ばかりしてました」


「考え方の相違ですか。でも、新しいことにチャレンジしたい気持ちはわかります」

「わかっていただけますか!」

「昔からの伝統は確かに大切ですが、それを守りつつ、新しいことを組み入れるのは必要だと、僕は考えます」


「あなたのおっしゃるとおりです。いや嬉しいですな。こんなに気の合う方がいらしてくれるなんて」嬉しそうにお茶を飲み「ところで、今日はどんな事でいらしたんですか?」


「二、三日前に、僕の友人がこちらにお邪魔したと思うのですが」

「ああ、そういえばそうでしたね」

「実は、彼を迎えにきたんです。今、どこにいるかご存知ですか?」

「もちろん知ってますよ。この館にいますからね」


「そうですか。すみませんが、呼んできていただけませんか?」

「いいですとも」彼が手を叩くと先程のお婆さんが来て「マーティ君を呼んできてくれないか?」ゆっくり言うと「はい。かしこまりました」ゆっくり返事をして出ていく。


「彼はここで何をしてるんですか?」遠慮がちに聞くと「彼をここまで案内した兄の孫娘から、話し方を学んでますよ」

「話し方を、ですか?」石にされていると思っていたのに、意外な答えが返ってきたので戸惑ってしまった。


 聞いた話と違うので隣のモスカールを見ると、平然としている。


 その時「ジジ様!」ベネが走り込んできた。

「これ、お客様がいらしてるから、お行儀よくしなさい」


「ハーイ」素直に返事をしてロイたちを見ると「こんにちは」ペコッと頭を下げるので「お邪魔してます」言葉を返すと、あとからマーティが入ってくる。


「ロイ! どうしてここにいるんだ!」

「マーティこそ、何してるんだよ」

「いや、ベネが、ここで話し方をマスターしないと、先へ案内できないと言うものだから」

「ベネ?」


「この子のことだよ」魔導師が(ひざ)の上に座っている彼女の頭を撫でる。


「ベネットです」自己紹介をしてマーティを見ると「この人が、お兄ちゃんが言ってたお友だち?」

「そうだ」と答え「俺が石にされてると思ってたんだろう?」ロイを見ると「あ、ああ」モスカールを見ると、彼女はフフッと笑った。


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