3-4 マーティの救出
しばらくして気を取りなおしたロイが汗を拭くと、案内役の女性を先頭に苔むした通路を進み、少しすると天井の高い大広場にでた。
その奥に、石でできた大きな館が、ヒカリゴケと外灯に照らされてぼんやりと見える。
「あれが魔導師の館です」案内役の女性が通路の出口で止まると指をさすので「あれが目的地か」見上げるロイ。
すると、モスカールが『ここからは私たちだけで行くから、ここで待っててくれないか?』案内役の女性に声を掛けると「わかりました。お気を付けて」
ロイとモスカールは曲がりくねった木の間に作られた通路を進み、二メートルはあると思われる鉄柵で作られた門の前に出ると、右横にある出入り口用の扉を開け、中に入ると、再び木の間に作られた通路を進んで玄関の前までいく。
樫の木で作られたような硬さを感じる木製のドアを見上げ、深呼吸をして呼び鈴を鳴らす。
「大丈夫かな?」不安そうなロイに『身構えず、いつもどおりにしてれば問題ないよ』モスカールが落ち着いた口調で声を掛ける。
少しすると、腰の曲がった小さなお婆さんが顔をだし「どちら様でいらっしゃいますか?」ゆっくりと、しかしハッキリと聞こえる声で訪ねてくる。
モスカールはお婆さんの横に屈み、ゆっくりと大きな声で『二、三日前に、鍵を探しにきた者の連れです。ここの主人に会いたいのですが、取り次いでもらえますか?』
お婆さんの耳元で理由を告げると「ああ、あの方のお連れ様ですか。それでは、これから取り次いで参りますので、少々お待ちください」返事をするとドアを閉める。
そして、五分ほど待っていると再びドアが開き、先程のお婆さんが顔を出して「旦那様がお会いになるそうです。どうぞ、お入りください」と大きくドアを開ける。
豪華な装飾品で飾られた広い玄関にはいり、ゆっくり歩くお婆さんのあとに付い屋敷の奥へ歩いていく。
(中は石と木材の混合で作られてるんだな)中を見回すロイ。
廊下の床は石でできているが上に絨毯が敷いてあり、各ドアは木製で石の壁には大きなタペストリーが飾られていて、冷たい印象がしない。
(結構、考えて作られてるな)
お婆さんは屋敷の奥までいき、いくつも並ぶドアの一つを開けると「こちらでお待ちください」
通された部屋は客間らしく、いろんな置物が部屋のあちこちに置いてある。
モスカールはすぐソファに座ったが、ロイは部屋の中を見てまわった。
そして、お婆さんがワゴンに乗せてお茶を運んでくると、少しして、ここの主人である魔導師が「お待たせして申し訳ありません」にこやかな顔をして入ってくる。
どんながめつい奴が来るのかと思っていたのに、長身で細身の身なりのいい紳士だったので、ロイは些か戸惑った。




