2-1 戦利品を持ってきた酔っ払い
なぜシュールはニゲラにプラズマを食らわしたのか?
それは、ニゲラとバーネットがドアの部屋から出たあと、代償の世界のドアの裏側で話を聞いていたロイが出てきて、シュールに今の状態を話したのである。
「バーネットが戻ってこないと、先に進めないぞ」
『それもそうだけど、ニゲラ、このままにしといたら、気付いたとき大変だよ』
立て掛けてある剣の前で倒れているニゲラを見ると「そうだな」
すると、バーネットが置いていった水筒を見付け、中身を確認してコップに注ぐと、ポケットから折り畳んだ紙の包みを出して中の粉を入れ、ニゲラを抱きおこすと少しずつ飲ませる。
『ロイ、何を入れたの?』
「睡眠薬だよ」
『どうしてそんなものを持ってるの?』
「中でちょっとあってね」
『そうなんだ。ねえ、喉に詰まらない?』
「気を付けてるよ」
飲ませ終えたとき、ものすごい勢いで鏡の部屋に通じるメインのドアが開いたので、ビックリしてドアを見ると、酔っ払ったバーネットがフラフラと入ってきた。
「果物ぉ、あったわよぉ」自慢そうに肩から掛けている大きな布袋を見せるので「作戦どおりに動いてくれなきゃ困るじゃないか」
「あらぁロイィ。どうして出てきたのぉ?」
「君が余計なことをするからだろう」
「でもぉ、こうやってぇ、果物を持ってきたのよぉ」自慢げにまた布袋を見せるので「わかった。ご苦労様」一応、労をねぎらう。
『でも、隣の鏡の部屋で寝てたんでしょう? どうやって螺旋階段があるところまで行ったの?』理解できないシュールが聞くと「違うわよぉ。私が寝てたのはぁ、螺旋階段のところぉ」
『ああ、そうなんだ。じゃあ、ニゲラはウソを吐いてたんだ』
バーネットがお尻をさすって歩いてくるので『どうしたの?』シュールが聞くと「寝てたときぃ、何かの拍子でぇ、動いたらしくてぇ、階段からぁ、ずり落ちちゃったらしいのよぉ」
「それで起きたのか。それはよかった」ロイがボソッと呟くと「よくないわよぉ。すごく痛かったんだからねぇ」
(ハハハッ、聞こえたんだ)苦笑すると「でもぉ、果物はぁ、手に入ったのよぉ」また自慢そうに布袋を見せるので「そうだな。これで取引をもっと有利に進められるよ」バーネットから袋を受け取ると「かなり重いな。どれだけ持ってきたんだ?」中身を見ると、見たことのある果物が入っていた。
『ねえロイ。どうしてこうなったの?』シュールが説明を求めてくるのでロイは剣の隣に座り、最初から詳しく話すと『宮殿が乗っ取られてる? だからバーネットが最初に出てきたの?』
「そうなのよぉ」
『そっかあ。アニスのところへ行くと思ってたのに、ロイのところへ行くって言うから、どうしてだろうと思ったけど、そういう理由があったんだ』
「そおよぉ」
『じゃあ、ここで代わりの尋ね人達に会わせるって、そのインサニアって奴に会わせるってことだったんだね?』
「だろうな。かなり練り込んである計画だよ」
『そうだったのかあ』




