1-3 酔っぱらった頼みの綱
ニゲラが一羽で戻ってきたので『バーネットはどうしたの?』所在を確認するシュールに『隣の部屋で寝てます』
『寝てる? もしかして、酔っ払って寝ちゃったの?』
『そうです』
『まったく、しょうがないなあ』
『起きたら戻ってくるでしょう。相当疲れてるようでしたから』
『そうだね』納得すると『でも、どうやってメインのドアを開けたの?』
『私でも開けられるように、仕掛けが付いてるんです』
『そうなんだ』
『それにしても、他の人達は遅いですね』
『難関を越えるのが大変なのかもしれない』
『そうかもしれませんね』
『でも、時間制限はないんでしょう?』
『ありませんが、いつまでも皆さんが戻ってくるのを、ここで待ってるわけにいきません。あなたは先へ進まなければならないのですから』
『みんなを置いてくことはできないよ!』
『しかし、彼らが戻ってこないのであれば、仕方ないのではありませんか? 先ほど話したとおり、ドアの中の世界はここと時間の経過が違うんですから』
『……どうしろと言うの?』
『最初に戻ってやり直すとかなり時間をロスしますから、ここで別の尋ね人達に引き継ぐんです』
『ここで? 別の尋ね人達って誰?』
『これから会わせます』
『でも、ロイたちを置いてきぼりにできないよ。みんな必ず戻ってくると言ったんだから』
『あなたが最後まで行ければ、彼らを連れ戻すことができるんですよ』
『なんで?』
『最後まで行ければ、あなたは自由になれますから』
『そうだった。でも、その間にみんなが出てくるかもしれないから、誰かいてくれないと』
『手配しておきますから、心配いりません』
『で、どうするの? 私は一人じゃ動けないんだよ』
『私が運びます』
『エッ! 無理だよ』
『大丈夫です』ニゲラの脚は鷹のように太くてガッチリしてるので、立て掛けてある剣を片足で掴むと『アッ、ドアが開いた!』
『エッ?』ニゲラが振り向いたとき、バリバリバリッ!『ギャア!』すごい悲鳴を上げてその場に倒れる。
『……ちょっと強くやり過ぎたかな?』
しばらくニゲラの様子を見ていたが動かない。
『ロイ! 大丈夫だよ!』声を掛けると、代償の世界の黒い半分に折れたドアから出てくるので『バーネットが戻ってこないの』
「やっぱり、彼女を一人で行かせたのは間違いだったな」困った顔をして鏡の部屋に通じるメインのドアを見る。
『あの状態だと、当分戻ってこないと思うよ』シュールが心配そうに言うので「……だろうな」言ったこっちゃないと頭を抱える。




