45-1 罠からの脱出 外の世界へ戻る
「さて、アニスを迎えに行くところまではなんとか作戦が立ったけど、問題はその後だ。四人揃ったとき、向こうがどう出るかわからないから、出方を見ながら対応してくしかないな」
「そういえば、モスカールが何か作戦を立ててるみたいだけど」バーネットが話を振ると「そうなんだ。どんな作戦なんだ?」
『それは……』
『モスカールの作戦は、みんなが揃ったときに話したほうがいいんじゃないかね?』主が言葉を遮って口を挟んでくる。
『先のことまで考えると、途中で何かあったとき、慌てて考え直さにゃならんだろう? そうなれば、話してる時間は無駄になるし、焦って失敗してしまうじゃろう』
『主の言うとおりだ』モスカールは頷くと『私の作戦が使えるかどうか、みんなが揃ったときの状況を見て話すよ』
「それがいいかもしれないわね。敵はかなり頭が切れるみたいだから、様子を見ながら作戦を立てて進んだほうがいいわ」
「確かにそうだな。じゃあまずは、アニスを連れ戻すところまでを一区切りとしよう」
『では、果物を調達してくるよ』ワインを飲み干すとモスカールが部屋から出ていく。
「それにしても、こんな事になるとは思わなかったわ」白ワインを飲むバーネット。「避けて通ろうとした幻想の星が精霊界で、しかも、七十年も前から乗っ取られてたなんて」
「そうだな。でも、あまりにも事が大きすぎて、まだ理解できないところがあるから、よくわからないよ」
「そうね。ああ、ロイ。あまり飲んじゃダメよ」彼がワインボトルを取るので慌てて止め「薬を飲まなきゃいけないんだから、アルコールは控えて」
「ああ、そっか」渋々ボトルを戻すと「付いてないな。美味しいワインがあるのに、飲めないなんて」名残惜しそうに目の前のボトルを見る。
それから少し経つと、モスカールが大きな布のバッグを二つ肩に下げて戻ってきた。
『これだけあれば足りるだろう』バッグを床に降ろすと「そんなに持ってきたの? かなり重そうね」
『時間がないから、交渉に時間が掛からないようにしないとね』
「そういえば、どうやってここから出るの? この世界での鍵を取りにいかないと出られないんじゃないの?」モスカールを見ると『持ってるから心配ないよ』
「持ってるって、いつ取りに行ったの? それとも誰か予備を持ってたの?」
『主が用意してくれたんだよ。連れてくる価値があるだろう?』
『モスカール、なんじゃその言い方は』
『悪かったね』
準備が整うと部屋から出て長老のところへ行き、お世話になったお礼を言って住居から出ると、付き人たちに見送られてドアの部屋へ続く穴へ入る。




