44-1 罠からの脱出 これからの行動に付いて
「マーティが入ったドアの中に入るには、ロイが見付からなかったからと言えば大丈夫かしら?」考えるバーネットに『そこは任せるよ。なんとしても次のドアに入ってくれ』
「でも、魔導師と取引する物が必要なんでしょう?」
『そうだよ』
「それは何なの? 途中で探せばいいようなこと言ってたけど」
『果物だよ』
「果物? 狭い世界にないの?」
『あの世界では植物が育ちにくくてのう。じゃから、わしらが定期的に差し入れしとったんじゃよ』
「そうなの」
『特に、お前さんが住んでた星の果物が喜ばれる』
「私の星の果物?」
『そうじゃよ』
「果物はドアの部屋に入る前、星に戻ったときに持ってきたけど、荷物になるから、外にいるイノンドのところへ持ってってもらってしまったわ」困った顔をするが「でも、なんで私が住んでる星の果物なの?」
『いろいろなところの物を持ってったら、お前さんのところの物が気に入ったそうじゃよ』
「そうなの。まあ、誉められて悪い気はしないけど」
「とにかく、果物を調達しないといけないな」難しい顔をするロイが「この世界の果物じゃダメなのか?」モスカールに聞くと『いや。ないよりマシだし、ここでしか調達できない』
「そうか。バーネットが持ってきた果物を使えれば一番いいんだけど」
「ニゲラに聞くしかないわね」
「それはダメだよ。もし彼女が不審に思ったら警戒してしまうだろう?」
「でも、もしまだ置いてあったら、使わない手はないわ」
「それはそうだけど。もし仮に置いてあったとしても、どうやって取りに行くんだ? ニゲラに怪しまれないように取りに行けるか? 彼女は向こうに付いてるんだろう?」
『ニゲラ……』
「どうしたんだ?」俯くモスカールに聞くと『ニゲラは、モスカールの妹なんじゃよ』
「妹?」聞き返すロイとバーネット。
「そうなると、彼女に対してヘタなことができないな」考えるロイ。
「彼女を助けるためにも、早くマーティたちを連れ戻さないといけないわ」
「そうだな。まずここで果物を調達しよう。バーネットが持ってきたものは諦めるしかないな」
「でも、チャンスがあれば取りにいきたいわ」
「ダメだよ。何度も言うけど、この状態でリスクを伴うことは極力避けたほうがいい」
「……でも」
「モスカール。果物はどのくらい持ってったらいいんだ?」
『あればあるだけ。たくさんあったほうが取引は有利に運べる』
「果物を持っていくことに、ニゲラは不信感を抱かないか?」
『絶対止めるだろうね。彼女は果物を定期的に差し入れしてたことを知ってる、というより、彼女が持ってってたんだ。だから、例え少量でも、持っていくことを許可しないだろう』
「そうか。なら、彼女に見付らないように持ってかなければならないな」
「ニゲラの目を盗んで持ってくことは不可能よ」
『その心配はないよ。私たちが運ぶ。私たちは鏡の中に入って移動するから、ニゲラの目に留まることはない』




