37-3 事件の調査
「やはりそう思われますか?」
「ええ。これは、その警官に詳細を問いたださないといけないわね」
「しかし、捜査は終わってますから」
「捜査記録が残ってるはずです。それを見せてくれるよう頼んでみます」
「そうですか。しかし、あまり無茶なことはしないでください」
「大丈夫です。では、お忙しいところをありがとうございました」メモ帳をしまうと「代償の件ですが」
「また、新聞にうちの広告を載せていただけるんですか?」
「すみません。今回は枠が一杯で、お載せできないんです」
「……そうですか」
「ですので、今回はディナー券をお持ちしました」バッグから出してテーブルに置く。
ここへ来る途中、代償について考えていたとき、買った新聞の広告欄に、有名レストランがディナー券を出したという広告が出ていたので、かなりの値段がしたが、効果があるだろうと思って購入していた。
「ああ、このレストランには一度行きたいと思ってたんですよ」
「では、これでよろしいですか?」
「もちろんです。というより、多過ぎます」
「構いません。喜んでいただければ、選んだ甲斐があります」
「早速今夜、家内と一緒に行ってきます」
「美味しい物をたくさん食べてきてくださいね。では、これで失礼します」
宿屋から出ると、事件が起こった飲み屋へ向かった。
ところが、角を曲がってもう少しで着くというところで、ガラの悪い数人の男たちに囲まれてしまった。
「急いでるところを悪いが、ちょっと一緒に来てくれねえか?」威圧的な態度を取るので「何を代償としてやってくれるのかしら?」睨みかえすと「あんたの耳に入れときたいことがあるんだよ」
「そう。でも、ここで言えないことだったら断るわ」歩きだすと銃を背中に付きつけ「言うこと聞かねえと、背中に模様を付けることになるぜ」
「……あんたたち、何者なの?」
「それは、一緒に来てくれたら話すよ」
「こんな所で銃を撃ったら、周りの人が気付くわよ」
「サイレンサーと言うものが付いてるから、気付かねえよ」
「……わかった」抵抗するのをやめると、路地裏へ連れていかれる。
「急いでるところを悪いなあ。けど、言うこと聞いてくれれば、すぐ退散するよ」
そこには数名の男が待っていて、中心にいる男が凄みのある声で話し掛けてきた。
「何をすればいいのかしら?」
「あんたがあの宿屋で受け取った物を、渡してくれればいいだけだよ」
(この人、ロイのバッグを取りにきた警官だわ)
話に聞いたとおりの大柄な男で、両手に包帯を巻いている。
(やっぱりこの事件、裏に何かあるわね)




