33-1 割り振られた仕事
「私は罪人の世話をするんですか?」案内役に聞くと「そうです。彼らの健康状態を診ることが、あなたの仕事です」
冷たく、冷え冷えとする石の通路をさらに進むと、医務室、と書かれたドアの前で止まり、ノックすると、中から白髪で小柄な老人が顔を出した。
「今日から働くことになった医者のバーネットさんです」案内役が紹介すると「ああ、やっと新しい医者が来たかね。よかった、よかった」
「では、先生から仕事内容を聞いてください」と言って案内役は帰っていった。
「さあ、入ってくれ。廊下は冷えるからのう」
中に入ると暖房が効いていて暖かい。
「お爺さんは、一人でここの患者を診てるんですか?」荷物を椅子の脇に置くと「昨日まで三名おったが、期限が来てのう」
「そうなんですか」
「明日になれば、また誰か来るじゃろうよ」
お爺さんは温かい飲み物を入れてくれて、ここでの仕事内容を話してくれた。
「一日はこんな具合になっとるで」
「では、新しい医者が来るまで、二交代制ですね?」
「そうじゃよ。カルテはそこの棚に入っとるでな」古びた棚を指すと「わしは、午後十二時になったら帰らせてもらうよ。交代は午前0時じゃから」
「十二時間労働はきついわね」
「今日だけじゃよ。あんたには特別手当を支給するよう、手配しといてあげるよ」
「それは嬉しいわ」
「では、一通り中を案内しようかね」飲み終わると、一階から順に説明してくれた。
ここは刑期の日数によって階が分かれていて、軽い者は一階に、上に行くほど刑期が長くなっている。
「ここで終わりじゃよ」
「でも、まだ上があるわ」上に続く階段を指すと「上の階におる者は無期刑の者じゃからね。彼らの世話はわしがやるから、あんたはせんでいいよ」
「そうですか」
一階に戻ってくると、今度は地下へ降りる階段を見付けた。
「この下には何があるんですか?」
「記憶を変換する者がおるよ」
「エッ!」大声を出し、慌てて口を押さえると「どうしてそんな事をするんですか?」
「自分が犯してしまった事を忘れて、新しい人生を生きるための治療じゃよ。主に、過失で罪を犯してしまった者が対象じゃがね」
「ここでは、そんな事までしてるんですか」
「働き手を失うと国が潰れてしまうでな。それに、彼らにも、やり直す機会を与えてやらにゃあいかん」
「そうですね」
「我々は不完全じゃから、どこかで救いの手を差し伸べてやらにゃあ、潰れてしまうからのう」
「本当に、おっしゃるとおりだと思います」
「ホゥ、あんたも賛同してくれるかね」
「はい」
「それは良いことじゃよ。きっといい医者になれるぞ」
「ありがとうございます。ところで、記憶の変換はこの国だけで行われてるんですか?」
「いや、各国で行われとるよ」




