26-3 外の世界へ戻る
「ドアを開く、鍵穴は、きっと、ドアの近くに、あるはずよ」
動機が収まらなくて、まだ少し息遣いが荒いまま突き当りまで行き、周りを丹念に調べはじめると、鍵穴は予想どおりすぐに見付った。
「パニックを、起してたわりに、ヤマカンは、当たったわね」ホッと息を吐く。
奥の壁の左側にある石でできた側面の真ん中に薄っすらと長方形の溝を見付けると、バッグから鍵を取りだし、溝に填めこむと、ガコンと音がして奥へ引っこむ。
すると、正面の壁が右側へズレて、奥へ続く通路が現れた。
「最初に、探したときは、ただの溝だと、思ってたけど、わからない、ものね」
そこへ、モスカールたちが到着した。
中へ入ると背負っている主を降ろし、金具を外してバーネットのところへ這ってくると『開けられたようだね』側面から鍵を取りだしてバーネットに渡し、次の行動を話しはじめる。
『これから先は注意して行動してくれ。ドアの部屋へ戻ったら、ニゲラはドアを閉めて鏡を外せと言うはずだ。鏡を外したら、せり上がった床は元に戻る』
「そう」ホッとするバーネット。
『きっとニゲラは驚くはずだ。予定では戻って来られないことになってるからね』
「それも、そうね」
『しかし、ニゲラはそんなことは顔に出さず、どうやって鍵のある場所まで行ったのか、と聞くはずだ』
「ああ、その事が、あったわ。難関があると、言ってたけど、どんな事が、あるのか、教えて」
『そうだね』
自ら動くことができない女性のワガママを交わして、鍵がある場所を聞きだすと説明すると「なるほど。姑息な手を、使って、引き止め、られそうね」想像を膨らまし「作り話を、大袈裟に、話すわ」
『任せるよ。その後、適当に理由をつけて、尋ね人が入ったドアへ何とかして入るんだ』
「やって、みるわ。でも、モスカールたちは、どうやって、移動するの?」
『私たちは、バーネットが持ってきた鏡に入って移動する』
「あの鏡に? コンパクトよ。そんな事が、できるの?」
『ああ。とにかく、ここで時間を潰してる暇はないんだ。さあ、行って』
バーネットはバッグに鍵を入れると斜め掛けにし、穴から出て階段に降りると梯子を下りるように四つん這いで下りはじめ、少し距離をあけてモスカールたちが降りてくる。
そして、ステンレスのようなツルツルしたドアの手前まで降りてくると、微かに話し声が聞こえてきた。
ニゲラとシュールが何か話しているのがわかる。
バーネットは階段の上にいるモスカールたちに頷くと、深呼吸して最後の階段を降り、ドアから出る。




