22-3 束縛の世界
翌朝、ドアをノックする音で目が覚めた。
目を擦りながらドアを開けると、昨夜、夕飯を運んでくれた女性たちが、朝食と、服をきれいに洗濯して持ってきてくれた。
「枕が変わると寝付けないんだけど、今回はぐっすり寝られたな」
寝る前に飲んだワインが効いたのだろうと思いつつ服を着替えて朝食を食べると、お皿を片付けにきた女性たちに混じって、長老の使いの男が一緒に入ってきた。
「時間が早いのですが、お急ぎのご様子なので、早めにお迎えに参りました」
「ありがとうございます」答えると「お世話になりました」お皿を片付けている女性たちに声を掛け、部屋から出る。
案内の男について大婆様がいる一番上の部屋へ行くと、中に入った。
「こちらへお掛けください」
奥に座っている大婆様の付き人の一人が指定する椅子に座ると「昨日はお疲れ様でした。よく働いてくれたと報告がきています。では、あなたがお聞きになりたいことにお答えします。ご質問をどうぞ」
「それでは、鍵がどこにあるのか教えていただけますか?」
「あの鍵の場所は、ここから西へ三つほど行った国の領主に聞くといい」大婆様がモゴモゴした口調でしゃべる。
「三つ先ですか。かなり距離がありそうですね」
「ここでは、他の国へ入るのに通行証が必要です。それは作っておきましたので、無くさないように持っていてください」椅子を勧めた付き人が合図を送ると、後ろに控えていた男が通行証を渡す。
「国境を越えるとき、それを提出してください。失くしたら入国できませんので、保管には十分に注意してください」
「わかりました」通行証をポケットに入れ「他の国に入国するにあたって、注意することはありますか?」
「国へ入ると最初に領主の館へ連れていかれ、滞在料として仕事を言い渡されます。その仕事は最低でも二日やらなければなりません。この事は規則で決まってますので、どの国でも同じです」
「最低二日ですか?」
「そうです」
「参ったな。それじゃ鍵の場所を知る領主の国へ行くまで、大分日数か掛かってしまう」困った顔をすると「急いでるからといって決まりを破ると罰せられますから、絶対に守ってください」
「違反したらどうなるんですか?」
「重い罰が課せられます。最低でも二十日間は牢に入れられますし、違反した分の労働が課せられます。それに、通行証にも記載されますので、何回も違反すると、国によっては、入国を拒否されてしまうこともあります」
「そんなに重い罪なんですか?」
「これは、この世界での決まりですから」
「そうですか。わかりました。規則は守らないといけないですからね」
「他には?」
「そうですね……国境まで案内していただけませんか?」
「わかりました。手配しますので別の部屋でお待ちください。後ろの者が案内します」




