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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第八章 幻想の星
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21-4 惑わしの世界

 

 目的の青い実のなる木までは、歩いて十分くらいの距離だった。


「なんだ、こんなに近くにあったのか。すげえ遠回りしたな」青い実を見上げると「次は黄色い岩だ」

「……黄色い、岩?」

「今度は泣くなよ。またバカにされるぞ」


「は、はい!」気を引き締めると「ほら、大声が出るように食ってけ」紫色の桃のような果物を投げて寄越すので受け取ると「あの、どうやって、食べる、ですか?」

「そのまま皮ごと食べるんだよ」と言われ、恐る恐る食べはじめる。


「とにかく、もう一つ先まで行きてえから、早く食って聞いてこいよ」と言われ、急いで食べると周りを見渡し、近くにある林の中へ向かった。


 ところが、入った途端「おやおや、これは美味しそうな獲物だこと」長い(つる)が伸びてきて、アニスを捕まえる。

「あ、あなた、食虫植物!」

「そうだよ。よくわかったね」

「は、離して!」


「ハイわかりました、なんて言うと思ってるのかい?」ズルズルと引きずられていくので「グリーク!」叫ぶと彼は剣を抜き、食虫植物に飛び掛かっていく。


 バサッ!


 蔓を切り落とすと食虫植物は悲鳴をあげ、アニスが地面に落ちる。


「これ以上切られたくなかったらサッサと行け!」

「チェッ」食虫植物は舌を鳴らし、ドサドサと音を立てて逃げていく。


 グリークは剣をしまうと「あれほど気を付けろと言っただろう!」

「もうイヤ! もう、こんな所、いるの、イヤ!」

「最初に言ったろう、あんたじゃ無理だって」


 アニスが涙目を向けると「戻るか?」と聞いてくるので、黙っていると「どうする?」

「……行く」立ち上がると涙を拭き、気を取りなおして林の中へ入っていく。


 奥にある白樺(しらかば)の林へ行くと「あら、人間だわ」

「まあ珍しい」

「どうしたの? 困ったことでもあるの?」

「あ、あの、黄色い岩、探してる、ですけど」

「ああ、あの岩ね」


「知って、ますか? 知ってたら、教えて、ください」

「ええ、いいわよ。あの岩は、あの山の向こう側だったかしら?」

「あら、この先の、河の向こう側だったと思うわ」

「そうだったかしら? 河の向こうにあるのは、水色の岩じゃなかった?」

「あら、そうだったかしら?」

「じゃあ、茶色い路の向こう側だったかしら?」


「……本当のこと、言いなさい」

「エッ?」

「本当のこと、言いなさい!」

「あら、怒ってるみたいよ」


「急いでる、から、早く、教えなさい!」

「どうする?」

「どうもこうも、ない! 早く、言いなさい!」

「……黄色い岩は、河の向こう側よ」


「本当?」

「……ええ」

「絶対?」

「……ええ」

「もし、違ってたら、切り倒して、やる!」


「本当よ! 本当に黄色い岩は河の向こう側にあるわ! だから切り倒さないで!」

「……わかった」(きびす)を返して白樺の林から出るとグリークがいて「言えるようになったじゃねえか」と言ってくるが「先、行く」立ち止まることなくサッサと歩いていく。


 指定された河に着くと、黄色い岩はすぐにわかった。

「最初からこのペースで進んでりゃあ、鍵のある場所に着いてたな」夕日を見るグリーク。「今日はここまでだ」


「次、どこ? 明日、すぐ、出発できる、よう、聞いて、くる」

「そうか。次は黒い沼だ」

「黒い、沼」歩きだすアニスに「すぐ暗くなるから、あんまり遠くへ行くなよ」声を掛けるが、彼女はサッサと歩いていく。


 グリークの心配をよそに、アニスはすぐに帰ってきた。

「どこにあるって?」

「ここから、南へ行った、ところ、ある」

「そっか。飯ができたぜ」大きな葉っぱで作ったお椀を渡すと何も言わずに受けとり、座って食べだす。


 その後、一言もしゃべらずに食べ終わると、毛布を掛けて横になるので、グリークはそんなアニスを見ると、入れたお茶をゆっくり飲みはじめる。


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