17-1 バーネットが入ったドアの中
そして、次に入ったバーネットは、ひたすら上に向かって階段を上がっていた。
「一体、どこまで上がるのかしら?」
前屈みになって狭い階段を上がっていると、右側の壁に、四つん這いになって通れるくらいの正方形の穴が現れた。
「これ、何かしら?」覗いてみると、奥に部屋らしきものがあるらしく、青い壁が見える。
「何の部屋かしら?」四つん這いになって横穴に入り「いい加減、立って歩きたいわ」ブツブツ文句を言いながら進んでいくと、風が吹き込んできた。
「この穴、通風孔なのかしら?」ヒョコッと穴から顔を出すと、そこは高い塔の上層階だった。
「エエッ!」慌てて顔を引っこめ「ど、どうしてこんな所に出るのよ! いくら天井から入ったとしても、こんな高い所まで上がってないわ!」パニック状態になるが「と、とにかく、こんな所にいられない。戻ろう」硬直した体をなんとか動かして後ろへ下がっていくと、ドン、何かが足にぶつかった。
ドンドン。
足を動かして周りを確認すると、どうやら、入ってきた穴が塞がっているらしい。
「ウソォ」振り向くと、やっぱり塞がっているので「マジッ!」頭の中が真っ白になり、その場から動けなくなってしまった。
その時「こんな所で何やってんだ?」と声を掛けられ、顔を上げると、穴の先から女性がこっちを見ていた。
「なんでこんな所にいるんだ?」
「知らないわよ! こっちが教えてほしいわ!」
「どうやってここまで昇ったんだ? 見たところ、ザイルすら持ってないようだけど」
「昇ったんじゃなくて、この奥の階段を上がってきたの。その途中でこの横穴を見付けて、入ったら穴が閉まっちゃったのよ!」後ろを指して叫ぶと「穴ねえ。とにかく、いつまでもこんな所にいられないだろう?」穴の中に入ってくると「これを体に付けろ」と太いザイルを渡す。
巻き終わると女性はザイルに金具を付け、自分の金具と繋げる。
「ねえ、何する気なの?」嫌な予感に襲われると「壁を伝って降りるんだよ」
「エッ!」顔が引きつる。
「こんな所に、エレベーターが付いてると思うか?」
「付いててほしいわ」
「そこまで近代化してないから、諦めな」
「諦められないわ」
「イヤなら、餓死するまでここにいるしかないよ」
「餓死する前に、あの壁を開ける方法を見付ければいいじゃない!」
「無理だよ」
「どうして!」
「前にこの中を調べたことがあるけど、何もなかったからね」
「前のときはなかったかもしれないけど、今はあるかもしれないでしょう?」
「まあね。そうかもしれないね」
「とにかく、一緒に探してよ」
女性は押しに負けて金具を外すと、二手に別れて穴の中を調べはじめたが、仕掛けらしいものは見付らなかった。
「前のときと同じだな」
「そんな……」
「どうする? ここに残って、壁を開ける方法を見付けるか? それとも、我慢して下に降りるか?」
諦めきれないバーネットは、奥の壁を押したり叩いたりしはじめたが、ビクともしない。
「諦めて降りたほうがいいんじゃないか?」女性が声を掛けるが、バーネットの耳には届いていないらしい。壁に向かって格闘を続けている。




